未来のじぶんに、ちょっと先の気づきを
自分らしい働き方を見つけるためのコラム

現在、転職・就職を希望しているものの、障害者手帳を所持していない場合、「障害者雇用の求人に応募できるかどうか」が不安ではないでしょうか。結論としては、手帳なしで障害者雇用に応募することは原則できません。
しかし、障害のある方の働き方には複数の選択肢があり、場合によってはこれから障害者手帳を取得するのも有効です。本記事では、手帳なしで障害者雇用で就労できない理由や、働き方の選択肢とメリット・デメリット、自分に合った働き方を探すコツを紹介します。
手帳なしでは障害者雇用で就労できない
障害者手帳を現時点でお持ちでない場合、障害者雇用枠での転職・就職は原則できません。その主な理由は「障害者雇用率制度」にあります。
障害者雇用率制度は障害者手帳の所持者が対象
障害者雇用枠とは、障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)で定められた障害者雇用率制度を満たすために、企業が一般雇用枠とは別に設けた雇用枠です。障害者雇用率は一般的には「法定雇用率」と呼ばれ、2026年7月から雇用者数37.5人以上の民間企業で2.7%となります。
この法定雇用率に含まれる「障害者」は、現時点では障害者手帳を所持している方に限定されます。障害者手帳を所持していない方は障害者雇用率制度の対象外となるため、障害者雇用で転職・就職することはできません。
障害者手帳の種類と対象となる障害の例
障害者手帳には次の3種類があり、条件に該当する場合は障害者手帳を取得できる可能性があります。
| 障害者手帳の種類 | 概要 | 対象となる障害・疾患の例 |
| 身体障害者手帳 | 身体機能に一定以上の障害がある方に交付される | 視覚障害 肢体不自由 心臓機能障害 |
| 療育手帳(愛の手帳) | 原則18歳未満で知的障害がある方に交付される | 知的障害 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 精神障害の状態にある方に交付される | 統合失調症 気分障害 発達障害 |
障害者手帳の交付対象となる条件は多岐にわたるため、詳細は厚生労働省の公式サイトや自治体の窓口でご確認ください。
指定難病のある方は今後、手帳なしで障害者雇用率に算定される可能性がある
指定難病のある方は、現行制度では疾患によって生活や就労に支障がある、もしくは身体機能に一定以上の永続的な障害が残っている場合のみ、障害者手帳を取得できます。しかし厚生労働省は、障害者手帳を所持していない難病患者も障害者雇用の対象とすることを検討中です。
手帳なしでも選べる!障害者の就労の選択肢
障害のある方は障害者手帳の有無に関わらず、次のような就労方法があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを見ていきましょう。
一般雇用枠でオープン就労
障害者手帳なしの方がオープン就労する場合は、一般雇用枠で障害を開示して就労することになります。障害の診断を受けているものの、何らかの理由で手帳は取得していない場合に有効な選択肢です。障害者雇用枠と比べて仕事の選択肢がは広くなる点が魅力ですが、障害者雇用率制度に準じた採用ができないため、この就労方法で障害のある方を受け入れている企業は少ないのが現状です。
一般雇用枠でクローズ就労
障害のあることを開示せずに一般就労枠ではたらくことです。キャリアの選択肢や給与などの条件は健常者と同じ条件となりますが、障害についてはいっさい考慮されません。障害が軽度で安定している場合や、うまく自己管理できる場合でなければ長期就労は難しくなる傾向があります。
一般雇用枠でセミオープン就労
一般雇用枠で一部の人にだけ、障害について開示して就労することです。障害を開示する範囲は、人事や上司らと相談しながら選びます。一般雇用枠となるため、仕事やキャリアの選択肢が広いうえに、部分的ではありますが障害への理解や配慮が得られることが特徴です。
ただし、健常者と同等の成果が求められることや、情報共有のバランスが難しいことから合理的配慮には限界があります。また、現時点ではセミオープン就労という働き方が浸透しておらず、対応できる企業が少ないのも難点です。
手帳なしであなたに合った働き方を探すために

何らかの事情で障害者手帳を取得したくない、あるいは取得できない場合は、障害者雇用枠ではなく一般雇用枠での就労となります。次のようなポイントを意識することで、一般雇用枠であなたに合った働き方を探しやすくなるでしょう。
障害特性や症状に合った仕事を選ぶ
一般雇用枠ではオープン就労であっても、十分な合理的配慮が得づらいケースがあるため、自身の障害特性や症状に合った仕事選びが特に重要です。得意なこと・苦手なことや体調の波を正確に把握し、それに適した職種を選ぶようにしましょう。無理のない業務内容を選択することで、長期的な就労につながります。
ダイバーシティに理解のある企業を選ぶ
オープン就労やセミオープン就労を選ぶ場合は、柔軟な働き方やダイバーシティに理解のある企業を選ぶことで、手帳なしの一般雇用でも合理的配慮を受けやすくなります。自己PRや面接で障害について伝えるときは、症状の説明だけでなく「業務への影響」と「対策」をセットで伝えることで、企業側が配慮事項に関する具体的なイメージを持ちやすくなります。
就労移行支援事業所を活用する
就労移行支援事業所は、一般企業での就労を目指す障害者を対象に、職業訓練や転職・就職支援を提供するための施設です。障害者手帳なしでも利用でき、無理なく就労準備を整えることができます。ただし、「障害福祉サービス受給者証」が必要なため、医師の診断書・意見書などを自治体の窓口に提出して発行してもらいましょう。
オンラインの共創コミュニティで相談する
手帳なしで転職・就職することに不安がある場合や、障害者手帳を取得すべきかどうか悩んでいる場合は、オンラインの共創コミュニティで、過去に同じように悩んでた仲間と交流してみるのも効果的です。医師やカウンセラー、ハローワークや転職エージェントなどのプロには話しづらい「本音の部分」を共有することで、あなたに合った働き方や障害との付き合い方などの気づきが得られるかもしれません。
障害者手帳を取得して就労すべきか迷ったら
障害者手帳を取得することへの精神的なハードルや、障害者雇用枠で就労することへの戸惑いから、あえて手帳を取得しない方もいらっしゃいます。しかし、手帳なしで障害者雇用枠で就労することはできないので、まずは障害者手帳の取得を検討してみてください。障害者手帳を取得して就労すべきか迷った方が知っておくべきポイントを見ていきましょう。
「手帳を取得=障害者雇用枠で就労」ではない
障害者手帳を取得したら、必ず障害者雇用枠で就労しないといけないわけではなく、一般雇用枠という選択肢も常に残ります。障害者手帳を取得することは、働き方の選択肢を狭めるのではなく、むしろ「選択肢を広げる」ことにつながるのです。
障害者手帳を取得することで経済的なサポートが得られる
障害者手帳を取得することで、次のような経済的なサポートが得られます。
- 所得税・住民税・自動車税などの特例措置
- 交通機関や携帯料金、施設入場料などの割引
自立支援医療は障害者手帳がなくても受けられますが、障害のある方は、通院や治療で生じる医療費の負担があるため、こうしたサポートは心強いでしょう。なお、これらのサポートは障害者手帳の取得が条件ではありますが、必ずしも障害者雇用枠で就労する必要はありません。
障害者雇用枠での就労は定着率が高い
障害者雇用枠で就労することで、職場の理解や合理的配慮を得やすくなります。一般雇用枠のオープン就労やセミオープン就労でも可能ですが、障害者であることを前提とした障害者雇用枠のほうが柔軟に対応しやすいのは事実です。こうした理由から、障害者雇用枠の定着率は一般雇用枠より高くなっています。詳細は次の記事をご参照ください。
就労の悩みを「あしたのあるきかた」で共有してみませんか?

障害者雇用枠は障害者手帳の所持が必須条件なので、手帳なしの場合は一般雇用枠で就労することになります。ただし、オープン就労やセミオープン就労であっても、職場で得られる理解や合理的配慮には限界があるため、長期就労を目指すなら障害者雇用枠を検討してみましょう。
障害者手帳を取得すべきかお悩みの場合や、障害者雇用枠での就労にどんなメリットがあるかイメージがわかないという方は、障害のある方を対象としたコミュニティで相談するのも効果的です。障害のある方が匿名・無料で参加できるキャリア共創コミュニティ「あしたのあるきかた」では、あなたと同じ境遇にある方や、かつて同じように悩んでいた方と交流できます。
障害者手帳なしでも利用できるので、支え合える仲間と出会うために、この機会にぜひ覗いてみてください。障害や疾患のつらさを共有・相談することで、今後どのように障害と向き合っていけばいいか、今の自分には何が必要なのかを考えるためのヒントが得られるでしょう。
戸田 幸裕
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員