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発達特性のこだわりとは何か?職場での悩みと解決のヒント

「こだわり」という言葉は、日常の中でよく耳にします。
「こだわりの逸品」「職人のこだわり」のように良い意味で使われることもあれば、「そんなにこだわらなくても……」「あの人はこだわりが強いからね」と、少し困った特徴として語られることもあります。では、「こだわり」とは一体何なのでしょうか。
今回は、発達特性のある人によく見られる「こだわり」について、特に職場での場面をもとに考えてみたいと思います。
発達特性の「こだわりが強い」と言われる理由は?よくある場面
発達特性のある人が「こだわりが強い」と言われる場面には、たとえば次のようなものがあります。
細部に時間をかけすぎてしまう
まず、「細部に時間をかけすぎてしまう」という場面です。 会議用のレジュメを作る際、必要以上に情報収集を続けてしまい、なかなか作業が終わらないことがあります。
上司から「2~3個くらいに絞れば十分だよ」と言われても、調べれば調べるほど気になる情報が増え、「どれも重要に思える」「どれも削れない」と感じてしまうのです。
その結果、「そんなに細かいところにこだわらなくてもいい」と言われてしまいます。
作業を途中で止めて切り替えることが難しい
また、「作業を途中で止めて切り替えることが難しい」ということもあります。
たとえば接客フロアで事務作業をしていると、作業に集中するあまり、お客様が近づいていることに気づいていても、「今やっていることを区切りのよいところまで終わらせたい」という気持ちが強く働き、すぐに対応へ切り替えられないことがあります。
周囲からは「気づいたらすぐ動いてほしい」と見られてしまうかもしれません。
ルールを変更して運用することが難しい
さらに、「ルールを変えて運用することが難しい」という場面もあります。
マニュアルには決められた手順があるのに、上司や同僚は状況やお客様に応じて手順を省略したり、やり方を変えたりしています。しかし、それがうまくできないことがあります。
「柔軟に対応して」と言われても、本人としては「どの場面で」、「どの程度まで」手順を変えてよいのかが分からず、かえって混乱してしまうのです。
一度覚えた手順を変更することが難しい
似たようなこととして、「一度覚えた手順を変更することが難しい」という特徴もあります。
上司から「こちらの方法のほうが効率的だよ」と何度も助言されても、これまでのやり方を続けてしまうことがあります。
これは「わざと変えない」のではなく、一度身につけた手順を書き換えること自体に大きな負荷がかかるためです。
このような場面では、「完璧主義」「細かすぎる」「こだわりが強い」と評価されることがあります。しかし、その背景には発達特性に関連した認知の特徴が影響しています。
「こだわりが強い」と言われる場面に共通する認知の特徴
たとえば、周囲の状況を広く見渡しながら必要な情報を拾うことや、全体像を把握すること、曖昧で流動的な状況を直感的に理解することに負荷を感じやすい場合があります。
そのため、状況の変化を読み取ったり、その場で判断を組み立て直したりすることにエネルギーを要することがあります。
その結果、
- 「こうすればこうなる」という予測可能性
- 「いつも同じ」であることによる安心感
- 「決まった流れ」で進められるルーチン
を重視する傾向がみられます。
つまり、「こだわり」の背景には、「どこまでやれば十分なのか」「何を優先すべきなのか」「どのように判断すればよいのか」といった曖昧な状況を処理する負担の大きさがあります。
そのため、次のような職場環境では、特に「こうすればこうなる」「いつもと同じ」「決まった流れ」を求める気持ちが強くなりやすくなります。
- 役割が曖昧である
- 正解が一つではなく判断基準が見えにくい
- 人によってやり方が異なる
- その場その場で対応が変わる
- 明文化されていないことが多い
「こだわりの強さ」は見方を変えれば強みになる
一方で、この特徴は大きな強みにもなります。
たとえば、細かなルールや整合性が求められる業務、ミスが許されない業務では、丁寧に確認しながら進める力が強みとして発揮されることがあります。
また、専門知識を深く掘り下げたり、抜け漏れの少ない資料を作成したり、業務を効率化するためのマクロ作成やシステム化を得意とする人もいます。
さらに、多くの人が少しずつルールや基準を変えていく中でも、長期間にわたり同じ基準を維持できることがあります。これは、安定した品質や高い正確性を支える力にもなります。
つまり、「こだわり」は見方を変えれば、「一つのことを深く追求する力」や「品質や基準を維持する力」でもあるのです。
能力を発揮するためにできる工夫
もちろん、困りごとを減らすための工夫も大切です。
発達特性のある人の中には、「曖昧さ」が減り、「何をどのようにすればよいか」が明確になることで力を発揮しやすくなる人がいます。
たとえば、
- 「気づいたら対応する」ではなく、「30分ごとにフロアを確認する」など行動を具体化する
- 作業前に「どの程度までやれば十分か」を上司と確認する
- 定期的な1on1などで「やるべきこと」と「やらなくてよいこと」を整理する
- 新しいやり方は口頭説明だけでなく、実際に見せてもらいながら覚える
といった工夫が役立つことがあります。
「こだわり」がある人にとっての「わかりやすさ」とは、物事が一定のルールで整理され、関係性や進め方が明確になっている状態、いわば「構造化された状態」です。
そのため、「自分はどのような環境や仕事の進め方だと力を発揮しやすいのか」という視点で自己理解を深めていくことが、とても重要だと考えています。
佐藤 恵美
精神保健福祉士・公認心理師・キャリアコンサルタント・臨床発達心理士
北里大学院にて医科学修士取得。精神科病院や都内クリニック副院長を経て、 2020年「メンタルサポート&コンサル沖縄」を設立。企業・公的機関での労働者カウンセリングや職場研修のほか、 キャリアコンサルタント養成にも注力。日本産業精神保健学会理事。著書に『もし部下が発達障害だったら』、『部下の発達特性を活かすマネジメント』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『職場の同僚のフォローに疲れたら読む本』 (PHP研究所) など多数。