未来のじぶんに、ちょっと先の気づきを
自分らしい働き方を見つけるためのコラム

障害や疾患のある方は、「生きづらい」「自分だけが取り残されている」と感じる瞬間があるかもしれません。そのような孤立感を和らげる手段のひとつが「ピアサポート」です。この仕組みは、同じ立場や経験を持つ人同士が支え合うことが目的で、現在では医療や福祉の現場だけでなく、オンラインコミュニティや日常生活にも広がっています。 本記事では、ピアサポートの基本からメリット・デメリット、活用方法や仲間とつながるコツを詳しく解説します。「誰かとつながりたい」「仲間がほしい」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。なお、本記事では障害者向けのピアサポートに焦点を当てて解説します。
ピアサポートとは

ピアサポート活動は「当事者団体活動」とも呼ばれ、障害種別によって歴史的背景や成り立ち、特徴が異なります。近年注目されている支援手法ですが、単純な「助け合い」とは異なり、互いに支え合って自立や成長を目指すためのものです。まずはピアサポートの定義と特徴について解説します。
ピアサポートの定義
ピアサポートとは、障害や疾患など同じ経験や悩みがある仲間同士が、対等な立場で支え合う活動を指します。ピアとは「仲間」を意味し、専門職による支援ではなく、当事者同士の相互作用が中心となる点が特徴です。
例えば、障害のある当事者同士が日常生活や働き方の工夫を共有したり、精神的な苦労や悩みを語り合ったりします。ピアサポートの重要な点が「支援する側」と「支援される側」のような役割が固定されず、状況に応じて入れ替わる流動性があることです。
仲間とのつながりを持つことで、安心感と自己肯定感の向上につながります。
ピアサポートが注目されるようになった背景
近年、ピアサポートが注目されるようになった理由のひとつが「障害者の権利条約」です。「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」というスローガンが示すように、障害者の人権と尊厳の尊重を促進することが目的です。当事者の意向を尊重することの大切さが認識され、障害者同士が主体的に互いを支え合うピアサポート活動が注目されるようになりました。
専門的なサポート機関や支援との違い
医師やカウンセラーによる支援は、専門知識やノウハウに基づいた介入がメインで、「支援する側」と「支援される側」の明確な役割があります。一方でピアサポートは、当事者の経験に基づいた共感が核となり、「理解される」「理解し合う」という体験が得られることが重要です。専門的な支援と異なり、必ずしも具体的な解決策が提示されるわけではありませんが、「同じことで悩んでいる人がいる」という事実が心理的な安心感につながります。
ピアサポートのメリット

ピアサポートのメリットとして、次のような心理的な変化が挙げられます。
つながりによる安心感が得られる
「何をどうすべきか分からない」「孤立している」など、当事者にしか理解できない苦悩や生きづらさは、医師やカウンセラーには相談しづらいことがあるでしょう。同じ経験をした人に話を聞いてもらうことで、「理解されている」という感覚が生まれ、前述したような精神的な安心感が得られます。
自己肯定感が向上する
ピアサポートでは支援されるばかりではなく、自分の行動や発言がほかの人のサポートにつながることも少なくありません。自分の経験が他者の役に立つため、自己肯定感が向上して精神的な充足感が得られます。
実生活や就労に役立つ情報が得られる
ピアサポートは互いに支え合うだけでなく、情報共有の場としても役立ちます。例えば、障害特性や症状を踏まえたうえでの日常生活の工夫や、各種支援制度の活用など、利用者の実体験に基づいた「生きた情報」が得られることが魅力です。障害者雇用枠での就労や配慮事項・働き方のコツなど、就職・転職に役立つ情報が得られることもあるでしょう。
指針となるロールモデルが見つかる
ほかの参加者の経験談や生きる姿は、ロールモデルつまり指針になり得ます。障害のある方は、障害特性や症状のつらさに加えて先が見えないことへの苦しみや悩みなど、日常的に大きな精神的負荷が生じる場合があります。それを乗り越えて生きる仲間と交流することで、「現在の苦しい状況がずっと続くわけではない」という希望を見出し、生きる強さが得られるケースも多いです。
ピアサポートのデメリット
さまざまなメリットのあるピアサポートですが、次のようなポイントには注意が必要です。
情報の正確性に欠ける場合がある
ピアサポートの参加者による「当事者としての経験やアドバイス」は貴重ですが、それが必ずしも自分に当てはまるとは限りません。また、誤った情報や偏った認識、医学的に不正確な治療法などが共有されてしまう可能性もあります。場合によっては、障害や疾患の悪化につながりかねないため、情報の見極めには注意が必要です。
依存関係が形成されてしまうことがある
仲間との精神的なつながりが得られることは、ピアサポートの大きな魅力ですが、それが精神的な「依存」になるリスクもあります。例えば、特定の参加者とのつながりに依存しすぎると、かえって自立が難しくなり、当初の目的からかけ離れてしまうなどです。適度な距離感を保ちつつ、専門家やカウンセラーとの面談を続け、自己判断で通院や治療を決して止めないようにしましょう。
精神的負担やストレス増加のリスクがある
相互理解や共感は、専門家からは得られないピアサポートならではのメリットですが、ほかの参加者に感情移入しすぎるあまり、かえって精神的な負担になることもあります。特に感受性の高い人ほど陥りやすいので、前述のとおり適度な距離感を意識することが大切です。
地方在住者は仲間を探しにくい
都市部であれば人口が多いため、自分と同じ障害や疾患のある仲間は見つかりやすいです。しかし、地方はそもそもピアサポートの団体数も少なく場所も限られているため、参加しようと思ってもできないことがあります。後述する「オンラインのコミュニティ」を活用すれば、地方在住の方もピアサポートに参加しやすくなるでしょう。
ピアサポートを安全に活用するためのポイント

ピアサポートのメリットとデメリットの双方を理解し、次のポイントを意識することで、ピアサポートを安全かつ効果的に活用しやすくなります。
自分に合った場を選ぶ
ピアサポートにはさまざまな団体やコミュニティがあり、対象となる障害や疾患、雰囲気や参加者の特性は大きく異なります。場合によっては「自分には合わない」「参加しづらい」と感じることもあり、無理に参加すると精神的な負担になってしまうでしょう。可能であれば複数の場を試してみて、自分にとって安心できる居心地のいい環境を見極めることが重要です。
他者との境界線を意識する
前述のとおり、ピアサポートの場でほかの参加者との精神的なつながりが深まりすぎると、ストレスで精神的な疲労や症状悪化、依存関係の形成に陥りかねません。そのため、自身と他者との「境界」を尊重して、必要以上に深く関わり過ぎないなど、適度な距離感を維持する必要があります。 ピアサポートはあくまで当事者同士で支え合うための交流の場であり、無理に参加し続けなければならないものではないため、負担を感じた場合は距離を取ることも検討しましょう。
専門支援と併用する
ピアサポートだけに依存せず、専門家やカウンセラーの支援も併用することが重要です。例えば精神疾患のある方は、医師の指示に従って精神科への通院や治療を続けながら、プロには相談しづらい本音の部分をピアサポートの仲間と共有することで、バランスの取れたサポートが得られるでしょう。
ピアサポートの種類・形態
ピアサポートは特定の形態に限定されるものではありませんが、次のようなものがメインです。
対面での交流
地域の支援センターや自助グループでの交流は、最も伝統的なピアサポートの形です。障害や疾患の当事者同士が直接対面して顔を合わせることで、悩みの共有や相談はもちろん、非言語的なコミュニケーションも含めた深い交流や相互理解が可能となります。安心できる空間での対話により、信頼関係を構築して長期的なつながりを築きやすいことが魅力です。
ピアサポーターによる支援
ピアサポーターとは、自身も障害や疾患の経験があり、それを活かして仲間をサポートする人のことです。福祉施設や医療機関では、専門職と利用者の間に立ち、橋渡し的な役割を担います。専門家とは異なる当事者としての経験に基づくアドバイスは、説得力があるため利用者にとって心強い支援となるでしょう。
なお、ピアサポーターには特別な資格はないため、基本的には誰でもピアサポーターとして活動できます。ただし、厚生労働省が定める「ピアサポート体制加算」を目的に、障害福祉サービス事業所で配置されるピアサポーターを目指す場合は、「障害者ピアサポート研修(基礎研修及び専門研修)」が必須要件です。
オンラインコミュニティ
インターネットの普及により、時間や場所に制約されない交流が可能になりました。都市部とは違って地方では、同じ境遇にある人が少なく、ピアサポートが存在しない、仲間とつながれないというケースも多いです。 その場合、オンラインコミュニティを活用することで、外出が難しい人や近くに仲間がいない場合でも、気軽にピアサポートに参加できます。匿名性を確保しやすいことや、対面コミュニケーションが苦手な方でも本音を話しやすいことが魅力です。
ピアサポーターになるには?

ピアサポートに参加する中で「自分も誰かの役に立てるのではないか」と感じることも出てくるでしょう。特別な資格を持つ専門職ではなく、自身の経験をもとに他者に寄り添う存在である「ピアサポーター」は誰でもなることができます。ただし、その役割に対する理解と姿勢が求められるため、あらかじめ理解しておきましょう。
ピアサポーターの心構え
ピアサポーターとして最も重要なのは「対等な関係」を維持する姿勢です。相手を助けるという意識が強くなりすぎると、無意識のうちに上下関係が生まれてしまい、ピアサポート本来の価値が損なわれてしまいます。
また、自分の経験を語ることは重要ですが、それを「正解」として押し付けない心構えも忘れないようにしましょう。自分の体験はあくまでひとつの事例に過ぎないという認識を持ち、相手の話を共感的に受け止めるという意識が、安心できる対話の場を生み出します。
ピアサポーターの役割
ピアサポーターには次のように、必要に応じて地域や専門機関とつなぐ「橋渡し」の役割が求められます。
| 地域移行支援 | 当事者ならではのアドバイスや外出同行で利用者の不安を解消する |
| 自立生活援助 地域生活支援員 | 共感・目標・希望・仲間づくり、症状の自己対処、医師や薬との付き合い方の助言などを行う |
| 相談支援 | 各種制度や利用方法について、自身の経験を活かして分かりやすく説明する |
| 地域定着支援 | 参加者とつながりを持ち、経験者同士にしか分からない苦労を共有し、精神的なサポートを行う |
| 家族への面接 | 家族関係について、経験者ならではの視点から助言する |
| 事業所内研修 | 同僚である専門職に対して、自身の体験をもとに障害者への配慮などレクチャーを行う |
ただし、一番重要なことは「安心して話せる場をつくること」にあります。障害や疾患で孤立している人にとっては、「ここに居てもいい」と感じられる場の存在自体が大きな支えになるのです。
ピアサポートに関するよくある質問
ピアサポートに関心を持ったとき、多くの人が共通して感じる疑問について、参加前に知っておきたいポイントや不安を解消するためのQ&Aをまとめました。
参加経験がないので不安です
ピアサポートは、経験の有無に関わらず誰でも参加できますが、初めての方はハードルの高さを感じるかもしれません。しかし、多くのコミュニティでは未経験の人も歓迎され、温かく受け入れられます。
また、発言を強制されるものではなく、慣れるまでは「話を聞くだけ」でも問題ありません。「何を話せばいいか分からない」「コミュニケーションや人付き合いが苦手」という方でも安心して参加できるでしょう。
どのような人が参加していますか
コミュニティの種類によって多様です。例えば、身体障害・精神障害・発達障害・難病など、ある程度カテゴリが決まっているコミュニティもあれば、診断の有無や障害・疾患の種類に関わらず、さまざまな人が参加できるコミュニティも多く存在します。
しかし、「自分と同じ境遇の人がいないのではないか」と心配する必要はありません。「孤独感」や「生きづらさ」を抱えているという点では同じであり、むしろ異なる経験やバックグラウンドのある人との交流が、新たな視点をもたらすケースも多いです。
話すのが苦手でも大丈夫ですか
ピアサポートは「話さなければならない場」ではなく「安心して過ごせる場」です。前述のとおり、発言が強制されるものではなく、無理に言葉にしなくても他者の話を聞くだけで、気付きや安心感が得られることも珍しくありません。さらに、オンラインコミュニティではテキストベースでのやり取りが中心になるため、対面コミュニケーションが苦手な方も安心して参加しやすいでしょう。
個人情報やプライバシーは守られますか
多くのピアサポートやコミュニティでは、守秘義務やプライバシー保護が重視されています。ただし、その内容はコミュニティごとに異なるため、参加前にルールを確認することが重要です。匿名で参加できるオンラインコミュニティでは、テキストベースなのでリスクを低減しやすくなります。いずれの場合でも個人情報の開示は必要最低限にとどめるのが無難でしょう。
ネガティブな話ばかりになりませんか
ピアサポートでは、障害や疾患のつらさや悩みが共有されるため、必ずしもポジティブな話題ばかりではありません。一方で、日常の小さな成功体験や前向きな変化が語られることも多いため、未来志向でご自身の障害や疾患と向き合うきっかけになります。
重要なのは、「ネガティブな感情を否定せずに受け止める」という姿勢です。ただし、ピアサポートのコミュニティによっては雰囲気に偏りがあるため、自分に合わないと感じた場合は別を探す柔軟性も必要になります。
万が一トラブルが起きた場合は?
ピアサポートは対人関係で成り立つため、意見の衝突や誤解が生じる可能性はゼロではありません。その場合は、まず距離を取ることが基本的な対応となり、運営者やモデレーターがいる場合は相談してください。無理に関係を維持しようとするのではなく、ご自分の安全と安心を最優先に考えることが重要です。
ピアサポートだけで問題は解決しますか
ピアサポートは精神的サポートや自立のための有効な手段ですが、すべての問題が解決できるものではありません。特に医療的なサポートや治療については、医師やカウンセラーの介入が必須であるため、ピアサポートはあくまで「補完的な支援」と位置づけることが望ましいです。
自分も誰かを支える側になれますか
前述したとおり、誰でもピアサポーターとしてほかの利用者をサポートできます。ピアサポートの本質は「支えられること」「支えること」の相互作用によって成り立つものです。あなたの経験や気付きは、ほかの人にとって価値ある情報となる可能性があります。さらに誰かを支える経験は、障害や疾患で失ってしまった自信を取り戻すことや、成長にもつながるでしょう。
オンラインのピアサポートは「あしたのあるきかた」へ

障害のある方同士が支え合うピアサポートに参加することで、仲間とのつながりによる安心感や自己肯定感が得られます。無理に会話に加わる必要はないため、初めての方でも安心して参加できます。
ただし、コミュニティとの相性によっては依存やストレスの原因になるため、ご自身の障害や目的に合うものを選びましょう。対面コミュニケーションが苦手な方や、地方在住でピアサポートに参加しづらいなどの場合は、オンラインのコミュニティも検討してみましょう。
障害のある方が匿名・無料で参加できるキャリア共創コミュニティ「あしたのあるきかた」に参加することで、あなたと同じ境遇にある方や、かつて同じように悩んでいた方と交流できます。障害や疾患のつらさを共有・相談することで、今後どのように障害と向き合っていけばいいか、今の自分には何が必要なのかを考えるためのヒントが得られます。
支え合える仲間と出会うために、この機会にぜひ、コミュニティに登録してみてください。
戸田 幸裕
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員