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障害者雇用枠の給料では生活できない?手取りの現実と暮らし安定のヒント

「障害者雇用枠」は、障害があり、障害者手帳を持つ方が選択できる働き方の一つです。必要な合理的配慮を受けられ、長く働き続けやすくなる一方で、待遇面やキャリアにおける壁になることもあるといわれています。この記事では「障害者雇用ではたらいても生活できないのでは……」という不安が生じる背景を踏まえ、暮らしや就労を安定させるヒントを紹介します。
障害者雇用枠ではたらいても生活できないって本当?
結論として「障害者雇用ではたらくだけでは生活できない」というのは、必ずしも正しい情報ではありません。実際に、障害者雇用枠ではたらきながら、安定した就労や生活を実現させている方もたくさんいます。
しかし、障害者雇用枠の仕事では、生活に十分な収入が得られるとは限らないことも事実です。十分な収入がないと、生活が成り立たないばかりか、思うように貯金もできず、将来や老後に不安が生じやすくなります。また、懸命にはたらいているにもかかわらず暮らしが楽にならないのでは、仕事にやりがいを感じられず、就労のモチベーションもダウンしてしまうでしょう。
そこで、障害のある方が活用できる暮らしや仕事に関する支援制度と、自分に合った働き方を知ることで、生活の負担を軽減できる可能性があります。
「障害者雇用枠では生活できない」という不安が生じる背景
次に「障害者雇用枠では生活できない」という不安が生じる背景となる、待遇・キャリア面の問題点を見ていきましょう。
給与水準が低い傾向にある
障害者雇用では、給与水準の低さから「生活できない」と感じている方もいます。国がまとめた調査結果によると、2023年度における障害者と一般給与所得者の平均賃金(賞与除く)は以下の通りでした。
| 区分 | 平均賃金(月額) |
| 身体障害者 | 23万5,000円 |
| 知的障害者 | 13万7,000円 |
| 精神障害者 | 14万9,000円 |
| 発達障害者 | 13万円 |
| 一般給与所得者 | 約32万円(年収約388万円 |
(出典:令和5年度障害者雇用実態調査の結果を公表します)
(出典:令 和 5 年 分 民間給与実態統計調査)
あくまで平均値ではありますが、障害者の平均賃金はいずれも、一般給与所得者の水準を下回っています。一人暮らしで出費を切り詰めれば何とか生活できる程度の給与水準であり、一般的に見て、余裕を持った暮らしを実現させるのは困難です。
また、税金や社会保険料などが引かれた最終的な手取り額はもっと低くなります。さらに、世帯人数が2人以上になると、約30万円以上の生活費がかかるといわれており、単独の収入だけでは生活が厳しくなることもあるでしょう。加えて、家賃や物価は、地域によって差があります。そのため、地域や生活状況によっては、世帯人数にかかわらず、余裕を持った暮らしを送るのは難しくなることもあるかもしれません。
キャリア形成の選択肢が少ない
障害者雇用の給与水準の低さの背景には、以下のような、雇用形態の制限とスキルアップの壁があるといわれています。
- 正社員からスタートできる求人が少ない
- 定型業務や軽作業が中心になりやすい
一般的に、障害者雇用枠では、非正規雇用からのスタートが多いほか、時短勤務ではたらく方も少なくありません。また、業務上の配慮や負担を調整した結果、定型業務や補助業務、軽作業など、はたらきやすさを重視した職務内容が割り当てられることもあります。このように、個々の能力や特技、経験が活かされなかったり、スキル・キャリアアップの機会に恵まれにくかったりすることも、給与額に反映されていると考えられます。
障害者雇用枠ではたらきつつ生活を安定させるためにできること

ここからは、障害者雇用ではたらき、安定した就労と生活を両立させるために知っておくと役立つ知識を紹介します。
生活上の負担を補填する公的制度を活用する
現在、国内では、障害があり、生活に制限や困難がある方を支援するさまざまな制度が展開されています。一例として、次のような公的支援・扶助が展開されています。
| 制度 | 概要 | 活用シーン |
| 自立支援医療 | 特定の医療を受ける方の医療費の自己負担額を軽減する制度 | 精神通院医療、更生医療、育成医療での長期的な治療が必要な方 |
| 障害者控除 | 確定申告で、障害手帳を持っている方の税負担を軽減する制度 | 障害者手帳を持っており、所得税・住民税の負担を減らしたい方 |
| 障害年金 | 病気・障害によって仕事や生活に制限のある方へ、一定額の年金を支給する制度 | 思うようにはたらけず、収入が少ない方 |
| 特別障害者手当 | 身体・精神のいずれかに重度の障害がある方へ、一定額の手当を支給する制度 | 日常生活で常時特別な支援が必要で、その費用負担を補填したい方 |
| 障害者グループホーム | 障害や病気のある方が、日常生活のサポートを受けながら共同生活を送る自立支援・福祉サービス | 一人暮らしに不安がある方 |
| 生活保護 | 収入が一定以下の方へ、生活費・医療費などの支援を提供する制度 | 現在の仕事の収入と、ほかの支援制度を合わせても最低限の生活を維持できない方 |
こうした制度を必要に応じて組み合わせて活用することで、暮らしの経済的な負担や不安を軽減できます。上記のほか、自治体によっては、独自の障害・福祉関連の手当や、障害者手帳を提示することで受けられる公共サービスが展開されていることもあるようです。
このような公的支援・扶助の多くは申請を前提としているため、利用を希望する場合は、お住まいの地域の障害福祉の窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。
キャリアアップのためのアクションを起こす
正社員登用制度のある会社に勤めている方は、昇格試験を受けることが、確実な収入アップの手段になります。また、資格手当が支給される場合は、該当する資格の取得を目指して勉強するのも一つの方法です。会社によっては、キャリアアップや資格取得のための奨励金が支給されることもあります。
そのほか、ハロートレーニングといった公的な職業訓練を受講したり、スキル特化型の就労移行支援事業所で訓練を受けたりすることも、キャリアアップの手段の一つです。新たな資格やスキルを習得し、仕事でできる業務の範囲を広げれば、昇給につながる可能性があります。
どの資格を取得するか迷ったときは、IT・Web分野など、習得したスキルを活かしやすい資格・職種がおすすめです。まずは無理のない範囲からできることを増やすことが、収入・キャリアアップの第一歩になります。
転職を視野に入れる
今の仕事では、収入・キャリアアップが難しい場合は、転職を視野に入れて活動を始めることも選択肢となります。同じ障害者雇用枠でも、企業・職種によって、職務内容や合理的配慮の提供体制、キャリア形成の考え方が大きく異なるためです。
ただし、転職によって収入が上がる可能性もある一方で、逆に下がることもあるので注意しなければなりません。転職で収入アップや生活の安定を目指すなら、転職支援サービスの活用をおすすめします。特に、民間の転職エージェントをはじめとする支援サービスは、ハローワークといった求人紹介サービスと比べ、企業規模が大きかったり、正社員を募集していたりする求人の割合が高いです。また、一般には公開されていない、好条件の求人(非公開求人)を紹介してもらえる可能性もあります。
しかし、一般的に、規模が大きく好条件の求人は、競争率の高い狭き門です。そのため、より良くはたらき、安定した生活基盤を整えるためには、給与などの待遇面だけでなく、以下のような視点を取り入れて仕事探しを進めることも重要だといえます。
- 福利厚生の充実度
- 定着支援の有無
福利厚生が充実していれば、収入が変わらなくても、生活の負担が軽減します。独自の法定外福利厚生制度を設けている会社もあり、必要に応じてより良い暮らしにつながる可能性があります。
また、無理なく長くはたらき続けられる環境ではたらくことで、収入面も安定しやすくなるものです。まずは自分の障害特性と希望する働き方を明確化し、どのような仕事が向いているのかを考えてみてください。
障害者雇用ではたらきながら希望の生活を実現させよう

障害者雇用ではたらく中で、収入や将来に不安を感じるのは、決して珍しいことではありません。とはいえ、職場に障害を必要な範囲で開示し、特性に応じた合理的配慮を得ながらはたらく障害者雇用枠は、障害のある方にとって、収入面だけでは測れない大きなメリットのある働き方です。障害者雇用枠での就労や生活に不安を感じているなら、同じような境遇にある仲間に話を聞いてみませんか。
障害のある方が匿名・無料で参加できるキャリア共創コミュニティ「あしたのあるきかた」では、障害があり、さまざまな経験を持つユーザー同士の交流や、情報交換が行われています。キャリア・スキルアップや、気持ちを分かり合える仲間に聞いた話やアドバイスから、これまで思いつかなかったような新たな選択肢が見つかるかもしれません。
仲間と一緒に、自分らしい働き方やキャリア、悩み・不安の解消法を考えましょう。
戸田 幸裕
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員