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自分らしい働き方を見つけるためのコラム

障害者雇用では「合理的配慮」の提供が企業に義務付けられています。しかし、障害者雇用ではたらくにあたり、障害のある方は次のような疑問や不安を感じることが多いです。
- どのような配慮を受けられるのか
- 困ったときは誰に相談すれば良いのか
- 途中で配慮事項を変更できるのか
- 伝えた配慮を続けてくれるのか
現在では、多くの企業が障害者雇用の合理的配慮について、適切な提供体制や相談窓口を整備するなどの取り組みを進めています。一方で、障害のある方が職場で何らかの課題を抱えているケースもあり、企業との認識にギャップが生じているのが現状です。
本記事では、障害者雇用の合理的配慮に関する企業の取り組みや課題、障害のある方が安心してはたらくために知っておきたいポイントを解説します。
障害者雇用の合理的配慮とは
障害者雇用の合理的配慮とは、障害のある方が健常者と同じように能力を発揮できる機会を確保するために、企業が必要な調整や支援を行うことです。障害特性は一人ひとり異なり、同じ障害名でも必要な配慮は変わるため、障害者本人と企業が話し合いながら、その人に合ったはたらきやすい環境を整える必要があります。
障害者雇用の合理的配慮について、まずは次のポイントから見ていきましょう。
- 合理的配慮の定義
- 合理的配慮の対象者
- 合理的配慮の重要性
合理的配慮の定義
合理的配慮とは、障害のある方がはたらくうえで生じる困難を取り除くために、企業が過大な負担にならない範囲で必要なサポートを提供することです。「障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)」の改正により、2016年4月から合理的配慮の提供が雇用主に義務化されました。
障害者雇用の合理的配慮には、次のようなものが該当します。
- 業務内容を障害特性に合わせて見直す
- 通勤の負担を減らすために勤務時間を調整する
- 口頭だけでなくテキストでも指示を共有する
例えば、発達障害のある方が「口頭だけでは業務内容を理解しづらい」と感じている場合、チャットやメールでも共有してもらうようにすることで、業務を進めやすくなるでしょう。
合理的配慮の対象者
「障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)」では、合理的配慮の対象者となる「障害者」を次のように定義しています。
身体障害・知的障害・精神障害・発達障害があり、長期にわたって職業生活に相当の制限を受けている、もしくは職業生活を営むことが著しく困難な方
上記に該当する場合は、障害者手帳を所有していなくても、企業は合理的配慮を提供する義務があります。例えば、障害はあるものの障害者手帳を取得していない方が、一般雇用枠で障害をオープンにして就労する場合、合理的配慮を受けることが可能です。
合理的配慮の重要性
障害者雇用の合理的配慮は、自分の能力や強みを十分に発揮し、安心してはたらくために欠かせない支援です。合理的配慮を受けることができなければ、障害特性による課題から疲労や不安が大きくなったり、職場に居場所がないと感じたりすることがあります。
一方で、障害特性に応じた配慮があることで仕事に取り組みやすくなり、自信や意欲を持ってはたらき続けることができます。自分らしく能力を発揮できれば達成感や自己肯定感なども高まり、職場での人間関係やキャリア形成も進みやすくなるでしょう。
障害者雇用における合理的配慮の事例

障害者雇用で提供されている合理的配慮の事例について、次の障害種別ごとに紹介します。
- 身体障害のある方への合理的配慮
- 精神障害のある方への合理的配慮
- 発達障害のある方への合理的配慮
- 知的障害のある方への合理的配慮
身体障害のある方への合理的配慮
身体障害のある方への合理的配慮では、作業環境や移動に関するものが中心となります。ただし、身体障害の種類は多様であるため、それぞれ必要な配慮も次のように大きく異なります。
<肢体不自由>
- スロープや手すりを設置する
- デスクや作業台の高さを調整する
- 移動の少ない業務を割り当てる
<視覚障害>
- 読み上げソフト・拡大表示ソフトを導入する
- 可能な限り音声で説明や指示を行う
- フレックスタイムや時差出勤で通勤の負担を減らす
<聴覚障害>
- コミュニケーションに筆談やチャットを活用する
- 文字起こしツールを導入する
- 会議では要約筆記や手話通訳を手配する
精神障害のある方への合理的配慮
精神障害のある方への合理的配慮では、過度な負担や疲労が生じにくいようにするための工夫や配慮が、能力を発揮するうえで効果的です。
- 通勤しやすいよう勤務時間を調整する
- 業務量や納期を無理のない範囲で調整する
- 静かな場所で仕事ができるよう座席を配置する
- 定期面談を実施して心身の様子を確認する
- イレギュラーや対人折衝が少ない業務を割り当てる
ただし、必要な配慮事項は疾患や特性によって大きく異なるため、ご自身の障害理解を深めて勤務先と相談することが重要です。
発達障害のある方への合理的配慮
発達障害のある方への合理的配慮では、コミュニケーションやタスク管理など、それぞれの障害特性に合わせた配慮が必要になります。
- チャットやメールでも指示を共有する
- 作業手順をひとつずつ具体的に示す
- 優先順位や納期を分かりやすく伝える
- 定期的に進捗確認やフィードバックを行う
- 必要に応じてイヤーマフや間仕切りを用いる
例えば、「なるべく早く対応してください」ではなく「今日の15時までに資料を作成してください」のように具体的に伝えてもらうことで、認識のズレを防ぎやすくなるでしょう。
知的障害のある方への合理的配慮
知的障害のある方への合理的配慮では、業務の手順や求められる結果などへの理解を深められるような環境整備が重要です。
- 写真やイラストでマニュアルを作成する
- 実際に作業を見せながら説明する
- 業務をひとつずつ段階的に教える
- 定期的に理解度を確認して説明し直す
- 気軽に質問できる雰囲気をつくる
定期的な理解度のチェックや質問しやすい体制が整っていることで、安心してはたらきやすくなります。
企業の障害者雇用では合理的配慮の体制整備が進んでいる

企業の障害者雇用における合理的配慮の体制整備について、障害者職業総合センターが発表した「企業における障害者雇用の質の向上に向けた取組の現状と課題に関する調査研究」のデータをもとに、次のポイントから解説します。
- 合理的配慮を申し入れる機会は広く整備されつつある
- 相談のための担当者・窓口を設置する企業も増えている
合理的配慮を申し入れる機会は広く整備されつつある
企業が合理的配慮を適切に提供するために、次のような「困ったときに相談できる仕組み」の整備が進んでいます。
| 取り組み | 一般企業 | 特例子会社 |
| 職場で支障となる事情があれば申し出るように伝える | 71.8% | 88.7% |
| 雇入れ時や障害を把握した際に、職場において支障となる事情を確認する | 45.5% | 74.4% |
| 定期的に面談を実施し、支障となる事情を確認する | 42.6% | 83.1% |
| 職場環境に変化があった際に、改めて事情を確認する | 27.4% | 54.4% |
| いずれも実施していない | 9.0% | 1.0% |
多くの企業では「必要な配慮があれば相談してください」という制度自体は整備されつつあります。ただし、障害者雇用に特化した特例子会社とは異なり、一般企業では7割以上が「課題発生時に申し出てください」と伝えるにとどまっているのが現状です。
相談のための担当者・窓口を設置する企業も増えている
相談窓口が明確になっていることで、「誰に相談すれば良いか分からない」という状況を防ぎ、困りごとを早期に共有・対応しやすくなります。合理的配慮について相談しやすくするための取り組みの実施状況は次のとおりです。
| 取り組み | 一般企業 | 特例子会社 |
| 相談に対応する担当者・部署を定め、当人に周知する | 71.6% | 86.2% |
| 配慮事項を申し出る方法を当人に周知する | 39.9% | 66.2% |
| 地域障害者職業センターなどの外部機関に対応を相談する | 20.8% | 61.0% |
| 配慮事項について社内に検討する部署や委員会を設ける | 18.2% | 46.2% |
| 対応について労働局やハローワークに相談する | 8.2% | 17.4% |
| いずれも実施していない | 11.7% | 1.5% |
7割近くの一般企業では、人事部や所属部署の上司などの相談先を設けています。また、合理的配慮に関する話し合いの方法は、「本人と管理者が口頭で話し合う」が一般企業81.0%、特例子会社84.6%と最も多いです。一方で、障害者からの相談に応じるための手続きの多様さは、一般企業ではまだ十分とは言えません。
障害者雇用で「十分な合理的配慮を受けられない」と感じる方も多い

障害者雇用では、合理的配慮の申し入れ機会や相談窓口の整備が進んでいますが、次のような理由から「十分な配慮を受けられていない」と感じる方も多いです。
- 時間経過により合理的配慮が障害特性と合わなくなる
- 合理的配慮を申し入れることをためらってしまう
- 必要な配慮事項を正確に言語化することが難しい
時間経過により合理的配慮が障害特性と合わなくなる
入社時・配属時などのタイミングで合理的配慮が重点的に検討されるケースは多いです。例えば、面談を実施して必要な配慮を確認し、業務内容やコミュニケーション方法などを調整したうえで、仕事を始める企業は増えています。
しかし、時間が経過するに従って、合理的配慮が障害特性と合わなくなるケースもあります。特に、次のような環境変化に合わせたアップデートが行われなければ、はたらきづらさを感じやすくなるでしょう。
- 担当業務や部署が変わる
- 上司が異動する
- 障害特性や症状が変化する
- 職場の人間関係が変わる
- ライフイベントなどの変化がある
合理的配慮を申し入れることをためらってしまう
企業側が相談窓口を設けていて、その存在を周知していたとしても、障害のある方が積極的に相談できるとは限りません。新たな困りごとが生じても、次のような理由から相談をためらう人は多いです。
- 上司が忙しそうで話しかけづらい
- 配慮を申し入れることで周囲に迷惑をかけたくない
- 人事評価に影響するのではないかと不安になる
- 自分だけ特別扱いを受けているような気がする
- 「これくらいは我慢すべきではないか」と考えてしまう
「もう少し様子を見てから相談しよう」と考えているうちに、体調やストレスが悪化してしまうこともあります。企業側は制度や機会を設けているつもりでも、障害者側が相談するタイミングや伝え方に悩んでしまうといったミスマッチが、合理的配慮に対する不満につながるのです。
必要な配慮事項を正確に言語化することが難しい
障害者雇用で合理的配慮を適切に受けるためには、「どのような場面で困っているか」「どのような配慮があればはたらきやすくなるか」を企業へ伝える必要があります。しかし、実際には必要な配慮を言語化することが難しく、悩んでいる方も多いです。
例えば、「仕事がしづらい」「疲れやすい」「ミスが多い」といった漠然とした困りごとは感じていても、自己理解や障害特性への理解が十分でない場合、具体的な配慮事項として説明できないことがあります。実際にはたらいて初めて分かることもありますが、「遠慮」や「タイミング」などの理由から相談が遅れてしまいがちです。
障害者雇用で合理的配慮を受けるためのポイント

障害者雇用の合理的配慮は企業の義務ですが、企業が一方的に提供するものではないため、次のポイントを意識することが重要です。
- 遠慮せず積極的に相談する
- 困りごとは小さいうちに共有する
- 外部の支援機関も活用してみる
遠慮せず積極的に相談する
職場で合理的配慮を受けることは「権利」なので、必要な配慮事項を伝える際に遠慮する必要はありません。障害のある方が安定してはたらくために必要なことであり、決して「特別扱い」を求めることではないからです。企業側も障害のあることを前提で採用し、「困っていることがあれば相談してほしい」と考えています。 しかし、本人が何も伝えなければ企業側は問題に気付けず、「現在の配慮で十分にはたらけている」と誤認してしまうかもしれません。困りごとを共有することで、初めて状況を把握して適切な配慮を検討できるようになります。
困りごとは小さいうちに共有する
仕事を続けているうちに、「以前は問題なかったことが負担になってきた」「新しい業務で困る場面が増えた」と感じることがあります。こうした変化が生じたときは、できるだけ早い段階で上司や人事担当者などへ相談することが大切です。
その際に配慮事項を完璧に整理しておく必要はなく、「このような場面で困ることが増えているので、どうすれば改善できるか一緒に考えていただけませんか」といった形でも十分です。企業と継続的にコミュニケーションを取って配慮内容を見直すことは、安心してはたらき続けるために欠かせません。
外部の支援機関も活用してみる
合理的配慮に関する企業の相談窓口の担当者が、必ずしも障害に関する十分な知識があるとは限りません。職場に相談するだけでは改善策を考えるのが難しいケースもあるため、必要に応じて次のような支援機関を活用することも有効です。
- 医療機関やカウンセラー
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
- ピアサポートやコミュニティ
第三者に相談することで、自分では気付かなかった解決策が見つかることや、企業との話し合いを進める際のアドバイスを受けられることがあります。 「同じような経験をした人の話を聞いてみたい」「働き方について気軽に相談できる相手がほしい」といった場合は、障害のある方同士が交流できるコミュニティを活用するのもひとつの方法です。サポートを受けられる場所を見つけておくことで、困りごとを一人で抱え込むことが減り、長期的な就労を実現しやすくなるでしょう。
障害や障害者雇用の悩みを一人で抱え込まないために

障害者雇用で合理的配慮を提供するために、相談できる機会や担当窓口の確保はさまざまな企業で進んでいます。一方で、配慮を申し入れることにためらいがある、言語化が難しいなどの理由から、思うようなサポートが受けられないケースも多いです。
まずは、困りごとは小さいうちに共有するなど、積極的に職場との対話を続けることが重要です。職場以外にも安心して悩みを相談できる場所があれば、配慮事項や伝え方など、安定就労を実現するためのヒントが得られるかもしれません。 障害のある方が匿名・無料で参加できるキャリア共創コミュニティ「あしたのあるきかた」では、障害や就労に関するさまざまな悩みを共有できる環境が整っています。支え合える仲間と出会うために、この機会にコミュニティに登録してみませんか。
戸田 幸裕
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員