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精神障害で労災認定を受けるのは難しい?認定基準や申請方法・認定を得るコツ

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仕事中や通勤中に生じた疾患・障害は、基本的には労働災害であると認定、つまり「労災認定」が受けられます。しかし、うつ病やPTSDなどの精神障害は、労災認定を受けることが難しいと言われています。そのため、精神障害で労災認定を受けられるかどうか、不安や疑問を感じている方は多いでしょう。本記事では、精神障害の労災認定について、認定基準や申請手続きの方法・注意点を分かりやすく解説します。

精神障害で労災認定を受けることが「難しい」と言われる理由

厚生労働省の「心理的負荷による精神障害の認定基準について」によると、精神障害で労災認定を受けるためには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります

  • 対象疾病を発病している
  • 対象疾病の発病前の約6ヶ月間に業務による強い心理的負荷があった
  • 業務以外の要因で対象疾病を発病したとは認められない

精神障害の場合、次の理由から、これらの要件に該当しないケースもあるため、労災認定を受けることが「難しい」と言われています。

実際の認定率は3割程度と低めの水準である

厚生労働省の資料によると、2024年時点における精神障害の労災認定率は30.2%で、それ以前もおおむね30~35%前後で推移しており、低い水準であるといえるでしょう。ただし、申請件数は毎年増えているため、労災認定数そのものは増加し続けています。また、請求件数は「医療・福祉」が983件、「製造業」が583件、「卸売業・小売業」が545件の順で多く、労災認定件数も同じ順で多くなっています。

業務と精神障害の因果関係を証明する必要がある

精神障害が業務によって発症したこと、つまり「業務起因性」を証明することが難しいケースがあります。精神疾患は外傷のように因果関係を明確化しづらいうえに、私生活の出来事や当人の性質など、業務外の要因との切り分けが難しいのです。そのため、精神障害による労災認定は、外傷や疾病など、身体的な障害と比べてどうしても難しくなります。

発症前の約6ヶ月間の客観的事実が考慮される

精神障害の発症前にどのような出来事があり、どの程度の心理的負荷があったかなど、具体的な事実に基づいて労災認定が行われます。例えば、長時間労働やパワーハラスメント、重大なトラブル対応などが「客観的な記録」として残っていない場合、本人の記憶や主観がメインとなるため、主張が通りにくくなってしまうのです。

心理的負荷の強度が「強」と判断される必要がある

心理的負荷の強度については、出来事ごとに「強・中・弱」の3段階で判断され、原則として「強」に該当しなければ業務起因性が認められにくいです。例えば、上司からの厳しい叱責や業務量の増加があったとしても、それが一般的な業務の範囲内と判断されると、パワーハラスメントによる精神障害としては認定されません。この評価が社会通念ベースで行われるため、本人の精神的苦痛の強度と乖離してしまうケースがあります。

精神障害で労災認定に該当するケース

厚生労働省の「精神障害の労災認定」によると、業務が原因で次のような精神疾患を発症した場合は、労災認定の対象になる可能性があります。

  • 気分障害(うつ病・双極性障害など)
  • 神経症性障害・ストレス関連障害・身体表現性障害(適応障害・パニック障害・急性ストレス反応など)
  • 統合失調症・統合失調症型障害及び妄想性障害

さらに厚生労働省の資料によると、次のようなケースは精神障害の原因もしくは悪化の原因となる、「業務による強い心理的負荷」に該当する例です。

  • 業務中に2ヶ月以上の入院を要する病気や怪我をした
  • 経営に影響するほど重大なミスを犯し、事後対応にも当たった
  • 退職の意思がないことを表明しているのに、執拗に退職を求められた
  • 業務指導の範囲を逸脱した、執拗な人格否定を上司から受けた
  • 多人数の同僚から、人間性を否定するような言動が執拗に行われた
  • 胸や腰などへの身体接触を含むセクシュアルハラスメントを継続的に受けた

以上を踏まえて、どのような場合に精神障害で労災認定されるか、より詳しく見ていきましょう。

パワーハラスメントやいじめの認定基準

厚生労働省の資料によると、労災認定されたケースの「具体的な出来事」で最も多いのが「パワーハラスメント(パワハラ)」です。2023年に精神障害の労災認定基準が改正されたことにより、パワハラの具体的な事例として次のものが挙げられています。

  • 業務上明らかに必要性がない、人格や人間性を否定するような精神的攻撃
  • 必要以上に長時間にわたる厳しい叱責や、ほかの従業員の面前での威圧的な叱責など
  • 無視をするなどで社内の人間関係から切り離す
  • 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制するなどの過大な要求
  • 業務上の合理性なく仕事を与えないなどの過小な要求
  • 私的なことに過度に立ち入るなど「個の侵害」を行う

また、性的指向・性自認に関する精神的攻撃なども含むため、例えばLGBTQ当事者であることへの執拗な侮辱なども、パワハラによる強い心理的負荷に該当すると考えられます。

過度の長時間労働や残業も対象となる

厚生労働省の資料によると、長時間労働も精神障害の原因になり得ることから、次のようなケースも労災認定される可能性が高いです。

  • 発病前の1ヶ月に約160時間以上の時間外労働を行った
  • 発病前の3週間に約120時間以上の時間外労働を行った
  • 発病前の2ヶ月間に連続して1月あたり約120時間以上の時間外労働を行った
  • 発病前の3ヶ月間に連続して1月あたり約100時間以上の時間外労働を行った


また、「ほかの出来事と関連したケース」として、例えば転勤して新たな業務に従事し、その後で月100時間程度の時間外労働を行った場合も該当すると考えられます。

カスタマーハラスメントの具体例も追加された

前述した2023年の認定基準改正では、労災認定される可能性が高いケースとして、次のようなカスタマーハラスメント(カスハラ)の具体例も追加されました。

  • 治療が必要なほどの暴行を受けた
  • 暴行などを執拗に受け続けた
  • 人格や人間性を否定するような言動を執拗に受けた
  • 社会通念に照らして許容される範囲を超える、著しい迷惑行為を執拗に受けた

厚生労働省の資料によると、著しい迷惑行為として「長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム」や「名誉棄損・侮辱・暴言」などが該当すると考えられます。また、心理的負荷が「強」ではなくても、勤務先に相談しても適切な対応がなく精神疾患を発症した場合も、労災認定される可能性が高いです。

精神障害で労災を申請する手順

精神障害で労災認定を受けるためには、次の手順で申請手続きを進めることが重要です。

ステップ1:医師の診断を受ける

「認定基準の対象となる精神障害を発病していること」が条件のひとつなので、まずは精神科や心療内科で精神障害の診断を受ける必要があります。どのような出来事でどれくらいの心理的負担があったか、診断書に明記してもらいましょう。なお、お住まいの地域によっては「労災保険指定医療機関」にて、無償で治療が受けられる場合があります。

ステップ2:客観的事実を証明するための証拠を集める

「業務による強い心理的負荷が認められる」ことも条件なので、発病の因果関係を客観的に証明できる証拠が必要です。例えば、長時間労働が原因の場合はタイムカードやPCのログイン履歴などが、客観的事実となります。パワハラの場合は、その証拠となる録音データやメール、LINEやチャットツールの履歴などが非常に効果的です。

ステップ3:労働基準監督署で労災申請を行う

労災関連の管轄は「労働基準監督署」なので、診断書・必要書類・証拠などを準備できたら、自治体の労働基準監督署に提出しましょう。申請書類は厚生労働省の公式サイトで入手できます。精神疾患発病の経緯や業務との因果関係について、申請書類に具体的に記載してください。

ステップ4:調査と判断が行われる

申請内容をもとに労働基準監督署が調査を行うため、必要に応じて調査への協力や追加書類の提出などを行いましょう。調査期間は数ヶ月~1年前後で、上司や同僚・医療機関にも聞き取り調査が行われることが多いです。因果関係が認められれば、精神障害で労災認定が受けられますが、万が一不支給の場合でも再審査を要求できます。

精神障害の労災認定の難しさに関するよくある質問

精神障害の労災認定に関する「よくある質問」をご紹介します。申請時の参考にしてください。

過去に精神障害の既往歴がある場合は不利になる?

精神障害の既往歴がある場合は、「個体側要因の影響がある」と判断されて、業務起因性が否定されるケースが見られます。ただし、「業務による心理的負荷によって再発または悪化した」ことを証明することで、認定される余地があります。

アルコール・薬物依存症があると労災認定を受けにくい?

アルコール・薬物依存症は、精神障害の労災認定の対象疾患ではないため、それ自体では労災認定は受けられません。また、アルコール・薬物依存症のある人が精神障害になった場合は、業務起因性が否定される可能性が高いです。業務要因と依存症の影響をどこまで切り分けられるかが争点となります。

パワハラや長時間労働があれば必ず労災認定される?

必ずしも労災認定されるとは限りません。パワハラや長時間労働があっても、それによる心理的負荷の強さが重要です。業務として許容される範囲と判断される場合や、客観的な証拠が不十分な場合は不支給となる可能性があります。

精神障害で労災認定が受けられる可能性を高めるコツは?

時系列を明確化して、いつどのような出来事があり、何が強い心理的負荷になったかを客観的事実として整理してください。そのうえで、前述したように勤怠記録やログイン履歴、チャットログや第三者の証言などの証拠を集める必要があります。

また、初診時からストレス内容を具体的に伝え、診断書と労災申請の内容に一貫性を持たせることも大切です。単に「つらかった」という主観ではなく、今回ご紹介した認定基準を踏まえて、「何がどの程度の強度で精神的苦痛を受けたか」を明確化しましょう。社会保険労務士や弁護士など専門家の助言を受けるのも効果的です。

精神障害に関する悩み相談は「あしたのあるきかた」で!

精神障害で労災認定を受けることは、業務との因果関係を客観的に証明する必要があるため、「難しい」と言われることが多いです。しかし、今回ご紹介した具体的な認定基準を踏まえて、業務上に起きたことがどれほど強い心理的負荷になったかを説明し、証拠を揃えて申請することで労災認定の可能性が高まります。

精神障害になった方は、まず療養に集中して心身の状態を回復させることが大切です。その際に生じる不安や悩み、将来的な就労や働き方について、相談できる相手がいれば心強いでしょう。障害のある方が匿名・無料で参加できるキャリア共創コミュニティ「あしたのあるきかた」では、精神障害のある方と交流できます。精神障害のつらい症状とどのように付き合えばいいか、どうすればつらい出来事を乗り越えられるかなど、これからの生活を立て直すためのヒントが得られるでしょう。

非公開: 戸田 幸裕
監修者 パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー

戸田 幸裕

上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員

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