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耳が聞こえなくてもできる仕事は?聴覚障害者の適職と求人票で確認すべきポイント

聴覚障害のある方は、障害特性の影響で仕事に制限が生じがちです。そのため、就職・転職をお考えの方は、「耳が聞こえなくてもできる仕事はあるのだろうか」という不安があるのではないでしょうか。本記事では、聴覚障害者が仕事で抱えがちな困難を踏まえて、向いている仕事や適職の探し方について解説します。
聴覚障害者はさまざまな分野で活躍している!
聴覚障害のある人も、実はさまざまな分野で活躍しています。厚生労働省の「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」によると、聴覚障害や平衡機能障害のある方がはたらいている分野トップ10は、次のとおりです。
| 製造業 | 12,772人 |
| 医療・福祉 | 3,636人 |
| 卸売業・小売業 | 3,192人 |
| サービス業 | 2,835人 |
| 金融業・保険業 | 2,328人 |
| 情報通信業 | 1,682人 |
| 運輸業・郵便業 | 1,452人 |
| 学術研究・専門・技術サービス業 | 1,290人 |
| 建設業 | 836人 |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 770人 |
聴覚障害のある方は、製造業をはじめとして多様な分野ではたらいています。ご自身の適性を理解したうえで、必要な配慮が受けられる仕事・職場を選ぶことが大切です。
聴覚障害者が仕事で抱えがちな困難・悩み
聴覚障害のある方がはたらく際は、さまざまな場面でハードルがあります。仕事で抱えがちな困難や悩みの代表例は次のとおりです。
会話についていけない
職場でのコミュニケーションは口頭によるものが基本ですが、聴覚障害のある方は聞き取りが難しい場合があります。会話のテンポが早いときや複数人が話すときなどは、特に内容を把握するのが難しいです。そのため、上司の指示が理解できないときや、会議・商談など重要なビジネスシーンに対応できないことがあります。
対応できない業務がある
耳が聞こえにくいという特性上、電話対応や接客は聴覚障害者にとって、特に対応が困難な業務です。例えば、オフィスで電話が鳴っていても同僚に指摘されるまで分からないことがあるため、業務の種類や割り当てなどの点で職場の配慮が必要になります。
キャリアアップの壁がある
対応できる業務に制限があることや、「耳が聞こえない=意思疎通が難しい」という誤解から、仮に能力があっても評価・昇進で不利になってしまうケースがあります。また、業務やスキルアップなどのために必要な情報にアクセスすることが難しいなど、機会が得づらいことも課題です。
体調不良になりやすい
聴覚障害がある人の中には、「内耳」に障害が生じているケースもあります。内耳は平衡感覚をつかさどるため、めまいや吐き気などの症状が出ることや、天候や気圧の影響を受けやすいことが特徴です。しかし、内耳の障害は認知度が低いため、周囲の理解が得られないこともあります。
職場で孤立してしまう
聴覚障害のある人は、業務に関するコミュニケーションが難しいうえに、休憩時のちょっとした雑談などにも加わりにくいので、社内で孤立しやすい傾向があります。そのため、聴覚障害に対する理解が得づらい職場では、人間関係によるストレスにより精神的な症状を併発する可能性があることも課題です。
聴覚障害のある人に向いている仕事

聴覚障害のある人は、視覚的なスキルや集中力・作業力などを活かせる仕事が向いています。代表的な仕事は次のとおりです。
事務職(データ入力メイン)
データ入力メインの事務職は、通話業務や口頭コミュニケーションの機会が少ないため、耳が聞こえなくても対応しやすい仕事です。顧客データや売上データなどの入力や、ファイリングなどが主な業務になります。PCスキルに加え、正確性や注意力が活かせるでしょう。
ライター
Webサイトに掲載する記事やコラム、マニュアルの制作などを担う職種です。パソコン作業が中心で、コミュニケーションはチャットツールを活用することで、聴覚障害者も取り組みやすくなるでしょう。文章力や集中力を活かすことができ、働き方の選択肢も多いです。
翻訳業務
外国語の文書を日本語に翻訳することがメインなので、聴覚障害があっても対応しやすい職種です。クライアントや編集者とのコミュニケーションも、基本的にテキスト形式で完結するため、語学力や外国文化への理解を活かしながらはたらけます。
ITエンジニア
ITエンジニアは、ソフトウェアやシステムなどの開発を行います。主な仕事内容はシステム設計やコーディングで、大半がコンピュータ上で完結するため、聴覚障害の影響が少ない仕事です。人手不足が深刻化している業界なので、未経験でもチャレンジしやすいでしょう。
CADオペレーター
CAD(コンピュータ支援設計)ソフトを使用し、エンジニアの指示どおりに設計図を作成する専門職です。対面業務やコミュニケーションを求められる機会が少なく、空間認識力や視覚的なスキルを活かすことができます。
デザイナー・イラストレーター
Webサイトやポスター、ファッションなどのデザインを行う仕事です。作業や連絡は基本的にパソコン上で完結するため、聴覚障害のある人もはたらきやすいでしょう。ただし、視覚的なセンスや、デザインツールの操作スキルの習得が必要です。
製造業・軽作業
商品の検品や梱包、清掃などの軽作業は目で見て判断する作業が多く、作業工程もシンプルでマニュアル化されています。そのため、聴覚障害のある人でもはたらきやすい傾向がありますが、機械を扱う作業は危険な場合があるため注意が必要です。
聴覚障害者が企業サイトや求人票でチェックすべきポイント
聴覚障害のある方は、前述した悩み事を軽減してはたらける環境を探す必要があります。そのために、企業サイトや求人票で次のようなポイントを確認しておくことが大切です。また、近年では現社員や元社員が企業を評価できる「口コミサイト」もあるため、チェックすることで従業員の生の声が分かります。
電話対応業務の有無
聴覚障害のある方にとって、電話対応の業務は特に負担が大きいため、求人票の仕事内容に電話対応が含まれていないことが大切です。例えば「受付業務」「顧客への電話連絡あり」などの場合、対応が難しい業務が求められてしまいます。「電話対応なし」「チャットツールでのやり取りが中心」などが理想的です。
社内コミュニケーションの手段
コミュニケーション手段がテキスト主体、あるいは必要なサポートが得られる職場なら安心です。例えば、メール・Slack・Teamsなどのチャットツールや、手話通訳者が常駐している場合であれば、耳が聞こえなくても問題なく対応できます。
また、情報共有や会議の際に、サポーターの配置や音声認識ソフトによる画面上での文字起こし(リアルタイム字幕表示)が導入されている職場であれば、聴覚障害のある方も安心して働けます。求人票に明記がない場合は、導入状況や対応可能な配慮について、企業に直接お問い合わせください。
聴覚障害者の雇用実績
障害者雇用の実績、特に聴覚障害者の雇用実績について記載されている企業は、障害への理解が深く、適切な配慮を受けやすくなります。例えば、「当社では聴覚障害者を含む障害のあるスタッフが複数在籍しており、連絡は社内チャットで行います」とサイトや求人票に記載されている場合は、はたらきやすい環境が整っていると考えられるでしょう。
合理的配慮の内容
聴覚障害者に対する配慮事項の内容により、職場での負担やストレスが大きく変わります。例えば、「文字起こしアプリを導入している」「業務連絡はチャットツールで統一している」など、耳が聞こえない状態をカバーできる配慮は特に重要です。
あなたに合った働き方を見つけるために
聴覚障害のある方が自分に合う働き方を探すためには、ご自身の障害特性と得意分野を理解する必要があります。特にどんな得意分野で、仕事をするうえで何に困難を感じ、どのような配慮があればはたらきやすいかなどです。次のようなサポートを活用することで、ご自身の働き方について考えるヒントが得られるでしょう。
障害者専門の就労支援サービス
聴覚障害で障害者手帳をお持ちの方は、障害者雇用枠での就労が可能です。「職場でコミュニケーションが取れない」「孤立してしまう」などの心配がなく、安心してはたらきやすくなります。
障害者専門の転職・就職支援サービス「dodaチャレンジ」では、聴覚障害に関する知識が豊富なキャリアアドバイザーが、あなたに合っていて必要なサポートが得られる仕事をご紹介します。メールやチャットでのご支援も可能なため、聴覚障害のある方もご安心ください。
障害者向けのコミュニティ
いきなり仕事を探すのではなく、はたらくための準備を整えたり、障害者雇用枠で就労するための情報を探したりしたい方には、障害者向けのコミュニティがおすすめです。聴覚障害のある方と交流できるので、悩みや不安を共有・解消し、前向きな気持ちでご自身の働き方について考えられるようになります。
「あしたのあるきかた」で聴覚障害の悩みを共有してみませんか?

聴覚障害のある人は、職場で「対応できない業務がある」「コミュニケーションが困難」などの課題が生じやすいです。そのためデータ入力やITエンジニアなど、電話対応業務や口頭でのコミュニケーションが少なく、パソコン上で完結しやすい仕事が向いています。
聴覚障害のある方は、コミュニケーションが取りづらくて孤立してしまう、自分に合う仕事や働き方が分からないなど、さまざまな不安を抱えていらっしゃいます。そうした不安や悩みを、障害者のためのキャリア共創コミュニティ「あしたのあるきかた」で共有してみませんか。同じ障害や悩みがある仲間と交流することで、あなたが輝ける仕事を探すためのヒントが得られるかもしれません。
戸田 幸裕
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員