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自分らしい働き方を見つけるためのコラム

精神障害のある方は、体調面や業務、人間関係などへの不安から「はたらくのが怖い」と感じることもあるでしょう。仕事が長く続かず「自分に向いている仕事など存在しないのではないか」と心配している方もいるかもしれませんが、そのようなことは決してありません。
この記事では、精神障害のある方に適した仕事や、安定しやすい働き方を見つける方法を解説します。
精神障害のある方に向いている仕事の特徴
精神障害のある方がはたらきやすい仕事には、共通する4つの特徴があります。
時間の融通が利きやすい
精神障害のある方が就労するうえでは、通院・治療時間の確保が不可欠です。体調や状況によっては通勤や勤務が難しい日もあるため、柔軟な働き方ができる仕事が向いています。
例えば、フレックスタイム制や時短勤務・在宅勤務が可能な仕事、本人の同意および労使協定の下で認められる裁量労働制といった働き方がおすすめです。逆に、残業時間が多い、通勤が大変といった仕事は、精神障害のある方の心身に大きな負担を与える恐れがあります。
通院・治療時間の確保と精神の安定のためにも、時間の融通が利きやすく、必要以上のストレスがない仕事や働き方を選ぶとよいでしょう。
自分のペースが保てる
精神障害のある方にとって、急かされたり、ペースを乱されたりするのは、精神的に大きな負担になることがあります。また、ちょっとしたことをきっかけに心身の不調が生じやすいことも踏まえると、常に時間に追われる仕事や、突発的な対応の多い仕事は不向きです。
具体的には、マニュアルが完備されており、ルーチンワークが中心の仕事なら、体調を考慮しながら、マイペースで進めやすいでしょう。ただし、自分のペースで進められる反面、ついはたらきすぎてしまうこともあるため注意してください。
また、タイマーやスケジュールアプリなどを活用する、声をかけてもらうよう協力を求めるなど、時間配分やスケジュール管理を徹底することも大切です。
対人コミュニケーションが最小限で済む
一般的に、はたらくうえで、人とのコミュニケーションを完全に避けるのは困難です。しかし、会話や対人折衝が多い仕事は、精神障害のある方にとって大きなストレスになることがあります。
おすすめは、事務職やITエンジニア、バックヤードなど、人とのコミュニケーションが最小限で済む仕事です。逆に、接客業のようなコミュニケーションの多い仕事はあまり向いていません。また、対面業務がほとんどない在宅勤務といった働き方も、就労上のストレスを減らす選択肢の一つです。
福利厚生が充実している
障害者雇用枠は、一般枠と比べ、給与が少ない傾向にあります。そのため、一般枠から障害者雇用枠の仕事に転職した場合、これまでより収入が減るケースも少なくありません。
たとえ給与が少なめでも、福利厚生が整っていれば、生活費の負担を抑えられます。例えば、家賃・生活費の補助や各種手当が出るなど、法定外の福利厚生が充実した企業に就職することで、経済面の不安が軽減されるでしょう。
データから検証!精神障害のある方はどのような仕事に就いている?
ここでは、厚生労働省が発表したデータを基に、精神障害のある方がどのような仕事を選び、どうやってはたらいているのかを見ていきましょう。
2024年度に精神障害のある方がハローワークを通じて就職した件数は65,518件でした。これは、前年比8.1%増、障害者全体の5割以上を占める割合です。法定雇用率の引き上げも相まって、精神障害者の就職件数は年々増加傾向にあります。
また同データによると、精神障害のある方が多くはたらいている業界は以下の通りです。
第1位.医療福祉:41.8%
第2位.製造業:10.8%
第3位.サービス業(他に分類されないもの):10.0%
第4位.卸売小売:9.8%
第5位.宿泊、飲食:3.7%
また職業別にみると、精神障害のある方は事務職に従事している方が最も多いことが分かりました。次いで、運搬・清掃・梱包等、サービス業、生産ラインに関する仕事に従事している方の割合が多くなっています(出典:令和6年度ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などを公表します|厚生労働省)。
自分に向いている仕事が見つからない方必見!精神障害のある方の仕事探しのコツ

精神障害のある方が仕事を探すときに心がけたい、4つのポイントを紹介します。
配慮事項を明らかにしておく
精神障害のある方が無理なくはたらくためには、応募や面接の前に、必要な配慮事項を明らかにしておくことが大切です。特性や必要とする配慮事項が明確になっていると、自分の障害を理解し、受け入れていることが企業に伝わりやすくなります。加えて、就職後の職場での誤解や偏見、不適切な配慮といったトラブルを最小限に抑えることにもつながります。どのような特性があるのかを踏まえ、できること・できないことや得意・不得意、必要とするサポートの内容をまとめておくとよいでしょう。
また、企業に配慮を伝える際は「配慮してもらって当然」という姿勢ではなく「このようなサポートがあればより力を発揮できます」といった前向きな伝え方のほうが、イメージアップにつながります。
障害者雇用枠や特例子会社への転職を選択肢に入れる
これまで一般枠で就労しており、障害のない方と同じようにはたらくことに限界を感じている場合は、障害者手帳を取得し「障害者雇用枠」の仕事への転職を選択肢に入れてみることをおすすめします。
障害者雇用枠とは、障害者手帳を取得している方を対象とする求人枠です。個々の障害に応じた合理的配慮を受けながらはたらけるため、長く安定して勤められる可能性が高まります。
時短勤務やパート・アルバイトから始める
長時間勤務の負担が大きすぎると感じている方や、休職からの復帰直後の方は、時短勤務に切り替えることを選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。また、現在就労していない、ブランクがある場合は、いきなりフルタイムではたらくのではなく、パートやアルバイトから始めるのも一つの方法です。
時間的な余裕のある働き方で、身体や心を少しずつ就労に慣らしていけるため、無理なくはたらける可能性が高いといえます。
障害者向けの転職・就職支援サービスを活用する
前提として、誰しも、自分に合った仕事を一人で探すのは容易ではありません。特に、精神障害のある方は、ハローワークの障害者窓口をはじめとする、障害者雇用に特化した転職・就職支援サービスの活用が推奨されます。一人ひとりの希望や適性を踏まえた求人の紹介や、応募書類の作成サポート、面接対策などの支援が受けられるため、自分にとって理想の仕事が見つかる可能性が高まります。
また、大企業・有名企業や給与・待遇の条件が良い求人は、一般非公開になっているケースも少なくありません。障害者専門の転職エージェントといった、非公開求人の紹介が受けられる就職支援サービスを活用することで、仕事探しの選択肢が大きく広がります。
精神障害のある方が仕事や仕事探しを無理なく続けるために大切な3つのこと
精神障害のある方が仕事や仕事探しをする際には、障害特性や体調面に考慮し、自分にとって無理のない進め方を知ることが大切です。ここでは、仕事や仕事探しを進めるにあたって心がけたい3つのポイントを紹介します。
自己判断で通院を止めない
精神障害のある方がはたらく前提となるのが、通院と治療の継続です。自己判断で中断すると、症状が悪化しかねません。
通院して治療を続けつつ、無理なくはたらける仕事を見つけることが重要です。
規則正しい生活と十分な休養を心がける
精神の安定と就労の継続のためには、規則正しい生活と十分な休養が欠かせません。起床・就寝の時間を一定させる、栄養バランスの取れた食事をとる、決まった場所へ通う習慣をつくるなど、生活のリズムを整えることで、症状の改善と、はたらく土台となる「職業準備性」の向上につながります。
「放っておくとずっと仕事をしている」「休むことに罪悪感がある」という場合は、定期的な休養を仕事の一環としてとらえ、毎日のスケジュールに組み込んでルーチン化してみてください。
また、精神障害の特性により、一人で職業準備性を高めることが難しいときは、特に単独での対策のハードルが高いとされる3ヶ月を目安に、就労移行支援事業所へ通所するのも選択肢の一つです。専門家のサポートを得ながら、生活リズムを整えたり、基本的なビジネスマナーが身につけられたりするので、転職活動やその後のビジネスライフをスムーズに進めやすくなります。
気軽に相談できる相手を確保する
仕事や日々のストレスや不安感は、誰かに相談することで軽くなることがあります。家族や主治医、職場の相談窓口、上司・同僚など、自分が気軽に相談できる相手を見つけておくことで、自分は一人ではないと感じられ、精神的な安定につながるでしょう。
身近な人や、対面では相談しにくいという場合は、障害者が集まるコミュニティを利用してみるのもおすすめです。同じ悩みや不安、困り事を抱える仲間と交流する中で、自分では気づかなかった解決のヒントや、自分らしくはたらく方法が見つかるかもしれません。
精神障害があっても諦めないで!自分に向いている仕事はきっと見つかる

精神障害がある方は、通院および突発的な体調不良に対応しやすい働き方や、対人コミュニケーションが少なく自分のペースで進められる仕事、福利厚生の整った職場を選べば、無理なくはたらきやすくなります。まずは個々の障害特性と必要な配慮事項を明らかにし、自分に合った仕事や働き方を探していきましょう。また、仕事や仕事探しでは、心身を健やかな状態に保つことが大前提です。通院・治療を継続しつつ、気軽に相談できる相手を確保することをおすすめします。
仕事や仕事探しに関する不安を抱えているものの、誰にも相談できずに悩んでいるなら、障害者のためのキャリア共創コミュニティ「あしたのあるきかた」を活用してみませんか。同じ目標や課題、悩みを持つ仲間とオンラインでつながり、共に考え、学べるプラットフォームです。無料・匿名で気軽に利用できるので、ぜひご登録ください。
戸田 幸裕
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員