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自分らしい働き方を見つけるためのコラム

障害者が正社員として働くことは難しいと感じていませんか。確かに、正社員雇用を取り巻く現状には課題がありますが、経験やスキルを磨くことで正社員を目指すことは可能です。本記事では、障害者雇用の現状を詳しく解説し、正社員になるために必要なポイントをご紹介します。「障害者が正社員としてはたらくのは難しい」とお悩みではないでしょうか。いくつかの理由から、障害者の正社員雇用を取り巻く現状が厳しいのは事実です。しかし、経験やスキルを磨くなど、しっかり準備を整えておけば正社員になることは可能です。本記事では、そんな障害者雇用の正社員の現状と、正社員を目指すために大切なポイントを解説します。
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障害者の正社員雇用を取り巻く現状とは?
まずは障害者雇用の形態や労働時間について、厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査を参照し、障害の種類別に解説します。
身体障害者
全国で約52万6,000人の身体障害者がはたらいており、雇用形態は次のとおりです。
| 雇用形態 | 雇用者数の割合 |
| 正社員 無期契約 | 53.2% |
| 正社員 有期契約 | 6.1% |
| 正社員以外 無期契約 | 15.6% |
| 正社員以外 有期契約 | 24.6% |
一般的に「正社員雇用」と認識されている、無期契約の正社員の割合は53.2%と半数を超えており、ほかの障害種別と比べると正社員雇用の比率が高いといえます。労働時間は週30時間以上が75.1%で、4人中3人がフルタイムに近い勤務体系ではたらいています。
知的障害者
全国で約27万5,000人の知的障害者がはたらいており、雇用形態は次のようになっています。
| 雇用形態 | 雇用者数の割合 |
| 正社員 無期契約 | 17.3% |
| 正社員 有期契約 | 3.0% |
| 正社員以外 無期契約 | 38.9% |
| 正社員以外 有期契約 | 40.7% |
無期契約の正社員の割合は17.3%で、ほかの障害種別より大幅に低い水準です。週30時間以上はたらく人の割合は64.2%となっています。
精神障害者
全国で約21万5,000人の精神障害者がはたらいており、雇用形態は次のとおりです。
| 雇用形態 | 雇用者数の割合 |
| 正社員 無期契約 | 29.5% |
| 正社員 有期契約 | 3.2% |
| 正社員以外 無期契約 | 22.8% |
| 正社員以外 有期契約 | 40.6% |
無期契約の正社員は3割未満となっており、過半数が非正規雇用となっています。精神障害者保健福祉手帳の等級は3級が約43%で、週30時間以上はたらく人は56.2%です。
発達障害者
全国で約9万1,000人の発達障害者がはたらいており、雇用形態は次のようになっています。
| 雇用形態 | 雇用者数の割合 |
| 正社員 無期契約 | 35.3% |
| 正社員 有期契約 | 1.3% |
| 正社員以外 無期契約 | 23.8% |
| 正社員以外 有期契約 | 37.2% |
無期契約の正社員は約35%で、知的障害者や精神障害者の場合と同じく過半数が非正規雇用です。精神障害者保健福祉手帳の等級は3級が約41%で、60.7%の人が週30時間以上はたらいています。
障害者雇用で正社員になることが難しい理由
結論として、障害者雇用で正社員になることは、一般雇用と比べると難しい傾向があります。その理由として次のようなものが挙げられます。
非正規雇用の求人が多い
障害者雇用の求人では非正規雇用の割合が高いため、正社員ではたらくことは「狭き門」となっています。例えば、障害者のための転職・就職支援サービス「dodaチャレンジ」では、2025年11月時点で公開求人1744件のうち正社員は645件となっており、6割以上は非正規雇用です。
その理由として、会社側の「安定就労が可能か見極めたい」という事情や、障害特性や症状から短時間労働を求める障害者が多いことが挙げられます。
障害特性や症状ではたらける時間が短い
障害特性や症状などにより、主治医がフルタイム勤務を許可しない、もしくは障害者本人が避けたいと感じているケースもあります。障害者雇用では「安定してはたらける」ことが最も重要です。そのため必ずしも「正社員が良い」というわけではなく、まずは非正規雇用や短時間勤務ではたらくことに慣れてから、フルタイム勤務へのステップアップを目指す人も多く見られます。
アピールできる経験やスキルが少ない
障害者雇用の仕事内容は、単純労働やルーチンワークが多いイメージがあります。一方で、正社員雇用を前提とした求人では、一般雇用と同じように経験やスキルが求められます。また、社会人としての一般常識やコミュニケーション能力、協調性なども正社員になるためには重要です。このような点をアピールすることが難しいと、正社員として就労するハードルが高くなります。
障害者雇用では必ずしも正社員が良いとは限らない

安定してはたらくためには「正社員であることが必要だ」と考える人は多いです。しかし、障害者雇用では次のような理由から、必ずしも正社員が良いというわけではありません。そのため、最初から正社員や正規雇用に絞り込んでしまうのではなく、非正規雇用も含めてさまざまな選択肢を検討することが大切です。
長時間労働や責任の重さが負担となる
正社員はフルタイム勤務が基本となり、企業や職種によっては、休日出勤や残業が求められることもあります。また、リーダーシップや成果が求められるなどで責任が重くなるため、それがプレッシャーとなって心身の負担が大きくなることもあります。無理をすると症状の悪化や再発につながるので、正社員としてはたらくことで生じる負担には注意が必要です。
体調に合わせた柔軟な働き方が難しい
障害者雇用では合理的配慮を受けることができ、仕事内容や勤務時間など、働き方についてはある程度は配慮してもらえます。しかし、正社員はあくまでフルタイム勤務が前提なので、体調の悪化や通院などが必要な場合でも、柔軟なスケジュール調整が難しいことがあるかもしれません。
契約社員やパートなどの非正規雇用であれば、週3~4日の勤務や時短勤務など柔軟にはたらきやすいので、現在の体調や症状などを踏まえて客観的に考えることが大切です。
障害者雇用で正社員を目指すために必要なこと
障害者雇用で正社員としてはたらきたい人は、次のポイントを意識して準備を整えてから、正社員を目指しましょう。
非正規雇用から正社員登用を目指す
障害者雇用で最初から正社員を目指す場合、転職活動が長期化する可能性があります。そのため、まずは非正規雇用としてはたらくことに慣れてから、正社員登用を目指すという選択肢も有効です。正社員登用の可能性がある求人であれば、実績を積み重ねたうえで、会社に貢献できる知識・スキルをアピールできれば、正社員としてはたらけるようになるかもしれません。
必要とされる知識・スキルを身に付ける
一般雇用でも障害者雇用でも、正社員には相応の経験・スキルや社会人としての姿勢が求められます。そのため、目指す職種やキャリアに応じて、評価につながる資格を取得するのが効果的です。例えば、事務職であればExcelやWordのスキルを証明できる「MOS資格」、会計の場合は「日商簿記3級」などの資格を取得すれば、正社員登用や転職の際にアピールできるでしょう。
独力でスキルを習得するのが難しい場合やブランクが長い場合は、リスキリングに取り組むことで効率的にスキルを習得し、キャリアアップを目指せます。
ご自身の障害特性や適性を理解する
障害者雇用で正社員としてはたらくためには、「長期就労できること」が前提条件となります。しかし、ご自身の適性に合う職種で必要な配慮を受けられる職場でなければ、長くはたらくことは難しいです。
そのため、どんな仕事がご自身に向いていて、どのような配慮が必要なのか、自己分析を行うことが大切になります。しかし、自己分析を自分ひとりで行うのは簡単なことではないので、情報を集めたり、アドバイスを得たりするのがおすすめです。
まずはコミュニティサイトで情報を集めよう!

「非正規雇用の求人が多い」「障害特性により長時間労働が難しい」などの理由から、障害のある方が正社員としてはたらくことが難しいのは事実です。しかし、安定就労できるように体調を安定させて、スキルアップに取り組んで準備を整えることで、正社員として就労しやすくなります。いきなり正社員を目指すのではなく、まずは非正規雇用からステップアップを目指すという選択肢も有効です。
ただ「障害者雇用で正社員としてはたらきたい」と思う一方で、「求人が見つかるか」「採用されるか」と悩んでしまうこともあるでしょう。しかし、障害者の就労に関する情報は少なく、こうした悩みをなかなか相談できる場がないのが現状です。
障害者向けのコミュニティサイト「あしたのあるきかた」では、求職中・就労中の障害者の方と交流し、就職活動の悩みや課題を共有することができます。さらに体験談やQ&A形式の質問、交流相談で同じ悩みを持つ人と一緒に課題に向き合えるので、この機会にぜひご自身の働き方や転職活動について考えてみましょう。
就業意欲のある障害者向け
コミュニティ
戸田 幸裕
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員