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自分らしい働き方を見つけるためのコラム

障害や難病がある方は、条件を満たせば障害者手帳を取得できます。障害者手帳を取得すると「障害者雇用枠での就職」が可能になりますが、その具体的なメリットについて疑問を感じる方もいるかもしれません。そこで本記事では、障害者手帳を取得して就職するメリットや、一般雇用枠との違いなどについて徹底解説します。
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そもそも障害者手帳とは?
障害者手帳を所持している人の就職について解説する前に、まずは障害者手帳について知っておきたいポイントを確認しておきましょう。
障害がある人に交付される手帳
障害者手帳は、心身に何らかの障害がある人のうち、特定の条件を満たした場合に交付される手帳です。障害者手帳を取得することで障害者総合支援法と障害者雇用促進法の対象となり、さまざまな支援を受けることができます。
障害者手帳には3種類ある
障害者手帳には、次のように3種類のものがあります。
| 障害者手帳の種類 | 概要 | 対象となる障害・疾患の例 |
| 身体障害者手帳 | 身体機能に一定以上の障害がある人に交付される | 視覚障害 肢体不自由 心臓機能障害 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 精神障害の状態にある人に交付される | 統合失調症 気分障害 発達障害 |
| 療育手帳(愛の手帳) | 原則18歳未満で知的障害がある人に交付される | 知的障害 |
療育手帳(愛の手帳)は自治体によって名称が異なることがあるほか、精神障害者保健福祉手帳は一般的に「精神障害者手帳」と呼ばれることもあります。それぞれの障害者手帳には「障害等級」が定められており、障害等級によって受けられる支援が異なります。
上記に挙げた「障害・疾患」はあくまで一例です。障害者手帳の交付対象となる条件は多岐にわたりますので、詳細は厚生労働省の公式サイトや自治体の窓口をご確認ください。
自治体の窓口で申請して取得する
各種障害者手帳は、自治体の窓口で申請できます。まずは、お住まいの自治体の担当窓口やWebサイトで申請書を入手し、必要事項を記入しましょう。そのうえで、医療機関が作成した診断書と本人確認書類、記入した申請書など必要書類を揃えて担当窓口に提出します。
判定の結果、条件を満たすことが認められた場合に障害者手帳が交付されます。障害者手帳の種類によって申請方法が異なる場合があるため、詳細については厚生労働省の公式サイトや自治体の窓口でご確認ください。
障害者手帳を取得すると就職でどんなメリットがある?
障害者手帳を取得して就職することで、次のようなメリットが期待できます。
障害者雇用枠で就職できるようになる
障害者手帳を取得することで、「障害者雇用枠」で就職できるようになります。障害者雇用枠とは、障害者の雇用推進を目的として、一般雇用枠とは別に設けられた採用枠です。
障害者雇用枠の魅力は、障害特性や症状に応じた合理的配慮、つまり職場で働くために必要なサポートを受けやすい点にあります。一般雇用枠で障害を開示してはたらく場合でも、合理的配慮は得られますが、障害者雇用枠の場合は障害があることが前提の求人なので、よりきめ細やかな配慮を得やすくなります。
心身の負担を減らしてはたらきやすい
「安定して就労しづらい」ことは障害者の大きな悩みです。しかし、障害者手帳を取得して障害者雇用枠で就職することで、職場で理解や配慮を得ることができ、長期的に安定就労できる可能性が高まります。詳細は後述しますが、一般雇用枠と比較して障害者雇用枠で就職した方のほうが、離職率が低い傾向があります。
大企業への就職チャンスが増える
必ずしも「大企業に就職することが良い」というわけではありませんが、大企業は障害者雇用に積極的な傾向があります。社会的責任やダイバーシティ推進のほか、障害者雇用促進法で定められた法定雇用率の達成が主な理由です。大企業ほど多くの障害者雇用数が求められることから、特例子会社を設立する企業も増えているため、一般雇用枠と比べて大企業や特例子会社で就職できるチャンスが多くなります。
税制上の特例が受けられる
障害者手帳を所持している人は、所得税の「障害者控除」が受けられます。控除額は27万円(特別障害者の場合は40万円)となり、その金額が所得金額から差し引かれます。なお、障害者控除などの特例は、一般雇用でも障害者雇用でも受けることが可能です。そのほかにもさまざまな特例措置があるので、詳細については国税庁のWebサイトをご参照ください。
障害者向けの就労支援・サポートを利用できる
障害者の就職について得られる情報は少ないため、自分ひとりで納得のいく就職先を探すのは簡単ではありません。障害者手帳を取得することで、障害者手帳の取得が条件となる障害者向けの就労支援が利用できるようになり、就職・転職時にさまざまなサポートを受けることが可能です。
例えば、「dodaチャレンジ」などの障害者専門の転職・就職エージェントでは、障害者雇用の専門知識を持つキャリアアドバイザーが、個々の障害特性や症状に合わせた支援を提供しています。
一般雇用枠と障害者雇用枠の就職は何が違う?

障害者手帳を所持している場合でも、一般雇用枠で就職することができます。一般雇用枠と障害者雇用枠には次のような違いがあるため、就職の際は慎重に検討してみてください。
職種やキャリアの選択肢
一般雇用枠の求人では職種や仕事内容が多様ですが、障害者雇用枠の場合はルーチンワークが多い傾向があります。そのため「専門的な職種に就きたい」「キャリアアップを目指したい」などの場合は、物足りなさを感じてしまうかもしれません。ただし、就職してから実績を積み重ねて「安定就労ができる」という評価を得ることができれば、キャリアアップを目指せる可能性があります。
平均的な給与水準
厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査」と「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、次のように障害者雇用枠の平均賃金は一般雇用枠より低い傾向があります。
| 一般雇用枠 | 330,000円 |
| 障害者雇用枠(身体障害者) | 235,000円 |
| 障害者雇用枠(知的障害者) | 137,000円 |
| 障害者雇用枠(精神障害者) | 149,000円 |
| 障害者雇用枠(発達障害者) | 130,000円 |
主な理由として、雇用形態や勤務時間が挙げられます。障害のある人は、症状や治療などの都合から非正規雇用や短時間労働を選ぶことが多いため、給与水準が低くなりがちなのです。
就職後の定着率
厚生労働省の「障害者雇用の現状等」によると、平成29年9月当時の調査では、就職・転職から1年後の職場定着率は次のようになっています。
| 求人の種類 | 1年後の職場定着率 |
| 障害者雇用枠 | 70.4% |
| 一般雇用枠(障害開示) | 49.9% |
| 一般雇用枠(障害非開示) | 30.8% |
一般雇用枠よりも、障害者雇用枠での就職は、職場定着率が比較的高いことが分かります。障害特性や症状に合った合理的配慮が得やすく、身体的・精神的に無理なくはたらきやすいことが主な理由です。
障害者手帳を所持していることを伝えて就職するか迷ったら
ご自身の障害について開示して就職することに対して、不安や迷いを感じる方も少なくないでしょう。例えば、「障害への理解が得られるか」「過剰な気遣いをさせてしまわないか」「職場で孤立しないか」などの悩みは、多くの障害者の方が抱えています。
職種・キャリアの選択肢や収入などの観点からも、「障害を開示せず一般雇用枠ではたらくほうがいいのでは?」と考える方も多いです。しかし、障害者雇用を選択した場合は「適切なサポートが得られる」「安心して長くはたらける」など、障害者雇用ならではの魅力があります。
障害者雇用に関する不安や悩みに対する答えを得るためには、情報を集めて自分に合った働き方を選択することが大切です。
障害者専門のキャリアアドバイザーへ相談する
障害者雇用については情報が得づらく、「求人を探したいがどうすればいいか分からない」という方は多いです。「dodaチャレンジ」のような障害者のための転職・就職支援サービスに相談することで、専門知識があるキャリアアドバイザーのサポートを得ることができます。
障害者向けのコミュニティサイトで体験談を聞いてみる
「障害者向けのコミュニティサイト」では、現在求職中の障害者の方や、障害者雇用ではたらいている人と交流できます。障害者手帳や就職に関する情報も豊富で、不安や悩みの相談もできるのでもう一人で抱える必要はありません。
さらに体験談やQ&A形式の質問や、交流相談で同じ悩みを持つユーザーと一緒に「障害者雇用のハテナ」を解決できるので、焦らずじっくりご自身の働き方について考えてみましょう。
障害者手帳を所持している方の就職の悩みは「あしたのあるきかた」で解決!

障害者手帳を取得することで、心身の負担を減らしながらはたらきやすい「障害者雇用枠」で就職できるようになります。一般雇用枠の場合よりも、障害特性や症状について職場の理解や配慮が得やすいことが、障害者雇用枠ではらたく大きな魅力です。しかし、障害者雇用に関して得られる情報は少なく、不安を感じやすいことも事実です。
障害者手帳を取得して就職することや、障害を開示してはたらくことに不安や悩みがある方は、まず情報収集を行いましょう。同じ障害を持つ人々と交流することで、自分に合った働き方を見つけるヒントが得られるかもしれません。「あしたのあるきかた」では、障害のある方が交流できるコミュニティを提供していますので、ぜひこの機会に登録してみてください!
就業意欲のある障害者向け
コミュニティ
戸田 幸裕
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員