未来のじぶんに、ちょっと先の気づきを
自分らしい働き方を見つけるためのコラム

身体障害にはさまざまな種類があり、特性によってできる仕事や向いている職場が異なります。個性や能力を活かしてはたらくには、自身の障害特性を踏まえ、適切な仕事を見つけることが大切です。この記事では、身体障害のある方の働き方や向いている仕事の見つけ方、利用できる支援サービスなど、仕事探しにあたって押さえておきたいポイントをまとめました。
身体障害がある方の仕事の選択肢
まず、身体障害のある方がはたらく際に考えられる4つの選択肢をみていきましょう。
一般枠ではたらく
障害の程度が比較的軽度な方や、身体障害者手帳を取得していない方は、健常者と同じ条件となる「一般枠」ではたらくことが選択肢となります。身体障害者に向いているといわれるのは、事務職やコールセンターといったデスクワークのほか、製造業のライン作業、清掃や施設メンテナンスといった軽作業などです。また、障害特性を活かし、医療や教育の分野で活躍している方もいます。
なお一般枠ではたらく場合、障害の開示・非開示の2通りの道があります。企業が合理的配慮を提供することは前提にはなりますが、開示したとしても企業側の負担が大きすぎるとサポートが難しい可能性もあるため、事前の相談と合意が不可欠です。
一方、非開示ではたらけば、職業選択の幅が広がります。ただし、障害の有無や個々の特性を正確に伝えていないことから、理解や適切な配慮が得られるとは限りません。障害の開示は、企業・本人の相互理解を深め、必要な配慮事項を明確に伝える手段です。就業上の困り事を減らし、より良くはたらくためにも、慎重に検討して選択する必要があります。
一般企業の障害者雇用枠ではたらく
一般企業の「障害者雇用枠」とは、主に障害者手帳を取得している方を対象とした求人枠です。障害があることを前提としているため、合理的配慮と理解を得て、特性に合わせて無理なくはたらける可能性が高いといえます。
ただし、障害者枠の仕事の職種や待遇はさまざまです。一般的に身体障害者に向いているといわれる仕事でも、それが自分に合っているとは限りません。自らの障害特性を踏またうえで、情報を集めて自分の希望や適性に合う仕事を見つけることが大切です。
特例子会社ではたらく
「特例子会社」とは、障害者へ配慮した就労機会の提供を目的として設立し、厚生労働省の認可を受けた子会社もしくはグループ会社です。環境整備や勤務形態の調整などの合理的配慮を前提としているため、特性に合わせて柔軟にはたらけます。さまざまな障害のある方が同じ職場ではたらいているほか、相談窓口が設置されていることも多く、安心してはたらけるでしょう。
ただ、特例子会社の求人数は比較的少なく、給与も高い水準ではありません。とはいえ、親会社は大企業や有名企業であることが多く、無理なく安定してはたらき続けられることは大きなメリットだといえます。
就労継続支援事業所ではたらく
就労継続支援事業所とは、一般企業での就労が難しい方を対象とする就労施設です。就労継続支援ではたらくことを「福祉的就労」といい、A型・B型の2種類の事業所があります。
A型事業所は、雇用契約と最低賃金が保障された環境の下、障害特性や体調を考慮しながらはたらけます。ただし、利用には条件があるほか、事業所の数も限られているため、就労先がなかなか見つからないことも珍しくありません。また、B型事業所と比較して一般企業での就労に近く、業務内容や個々の心身の状態によっては通所が大きな負担になる恐れもあります。
一方、B型事業所は一般企業やA型事業所ではたらくことが難しい方を対象とする就労施設です。雇用契約は結ばず、対価として工賃を受け取りながら職業訓練が受けられます。A型事業所より利用頻度や作業時間を調整しやすく、柔軟な働き方が可能です。ただ、工賃は最低賃金以下となっているケースも多く、B型事業所の収入だけでは経済的な自立が難しいといえます。
身体障害のある方が安心してはたらき続けられる仕事を見つける3つのヒント

ここでは、身体障害のある方が無理なく安定してはたらき続けられる仕事を見つけるための3つのポイントを紹介します。
自分の障害特性を正しく理解する
一口に身体障害といっても、その種類や特性、程度は人それぞれ異なります。障害特性や向き・不向きを踏まえて仕事を探さなくては、心身に大きな負担がかかり、長く続けられません。
逆に、障害特性への理解が深いほど、仕事探しや就業の満足度が高いといわれています。パーソルダイバースの調査では、障害特性への理解度が高いほど就職後の満足度が高いことが分かりました(出典:パーソルダイバース「dodaチャレンジ」調査レポート)。自らの障害に向き合い、できること・できないことや就業にあたって必要な配慮を明らかにしておくことで、無理なく安定してはたらき続けられる可能性が高まります。
相談相手を確保する
身体障害のある方がより良くはたらくためには、困ったときの相談先の確保が欠かせません。悩みを一人で抱えていると、悪いことばかり考えてしまい、解決につながりにくいばかりか、ストレスが溜まってうつ病や適応障害などの二次障害を発症する恐れもあるからです。
悩みは、誰かに相談するだけでも気持ちが軽くなり「自分は一人ではない」と感じられます。家族や知人・友人のほか、障害に関する専門家や同じような状況にいる仲間など、相談しやすい相手を見つけておくとよいでしょう。
職業準備性を高める
「職業準備性」とは、就業にあたって備えておくべき基礎的な力です。具体的には「決まった時間に起床・就寝する」「遅刻しないように出勤する」などが挙げられます。
職業準備性を高めたいなら「就労移行支援事業所」への通所がおすすめです。就労移行支援事業所では、一般企業での就労を目指し、職業準備性や就労に役立つ技能の習得、就職活動のサポート、定着支援など幅広いサービスが受けられます。対象は18〜64歳までの方で、障害者手帳の有無は問いません。特性に応じた個別の支援計画の下、就業や生活の訓練、実習、職場体験などを通してスキルアップが図れます。
ただし、利用期間は最長2年間です。通所可能期間の満了後は就職先を見つけなければならないため、計画的に利用することが求められます。
身体障害者の方が利用できる仕事の悩みの相談場所
身体障害のある方が仕事や仕事探しに関する悩みを抱えているときは、次のような機関・サービスに相談してみましょう。
- 公的な相談窓口
- 職場の相談窓口
- 障害者向け転職・就職エージェント
- 障害者用コミュニティサイト
公的な相談窓口
公的機関の中には、障害のある方の就業に関する悩みの相談を受け付けている機関が存在します。例えば、全国のハローワークには障害者専門窓口が設置されており、求人の紹介や職業相談が受けられます。そのほか、地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターなどの機関でも相談可能です。こうした公的機関は相互に連携し合い、包括的な支援サービスを提供しているので、悩みがあるときは積極的に活用してみるとよいでしょう。
職場の相談窓口
仕事の悩みは、上司や先輩、同僚など同じ職場の人に相談することで、解決する可能性があります。企業によっては、職場内に仕事や就労に関する相談窓口が設置されているほか、常時50人以上の従業員がいる企業には産業医の設置が義務付けられているため、身近な人に相談しにくい場合は利用を検討してみてください。
障害者向け転職・就職エージェント
「障害者向け転職・就職エージェント」とは、仕事探しに関するさまざまな相談ができる就活・就労支援サービスです。身体障害のある方が仕事や転職に関する悩みを相談できる専門サービスとして、障害者雇用に精通したキャリアアドバイザーがサポートします。
具体的には、一般公開されない非公開求人の紹介や障害者雇用の市場動向や最新情報の提供、応募書類の作成や面接準備のサポート、日程の調整など多彩で幅広いサービス内容となっています。困り事や悩みが生じたとき、すぐに頼れる心強い味方です。
障害者向け転職支援コミュニティ
障害のある方が仕事や転職活動に関する悩みがあるときは、同じ障害や目標を持つ仲間と交流してみるのも一つの方法です。仲間探しなら、「障害者向け転職支援コミュニティ」の利用をおすすめします。基本的にオンライン上での交流となるため、身近な人や専門家に相談しづらいことでも気軽に話しやすいといえます。さまざまな障害や特性、経験を持つ仲間が集まっており、実体験に基づく実践的なアドバイスが得られるかもしれません。
また、サイトによっては、仕事の悩み解決や仕事探しをサポートする学習コンテンツも提供されています。悩みやつらい気持ちを誰かに話すだけでも心が軽くなるので、気軽に相談してみるとよいでしょう。
身体障害がある方の仕事の悩み相談や仲間探しは「あしたのあるきかた」へ!

身体障害のある方は、一般枠での障害開示・非開示による就労のほか、障害者雇用枠や特例子会社、就労継続支援事業所などさまざまなはたらく選択肢があります。公的・民間の相談窓口を活用して自らの障害特性への理解を深めれば、自分らしくはたらける仕事が見つかりやすくなるでしょう。
また、同じような目標や悩みを持つ仲間と積極的に交流することでも、気持ちが軽くなり、課題解決のヒントが得られるかもしれません。就労を目指す障害のある方が仲間を探すなら「あしたのあるきかた」を利用してみませんか。交流の場や学べるコンテンツなど、あなたのペースで自由に活用できるサービス・情報が満載です。ぜひお気軽にご登録ください。
就業意欲のある障害者向けの
コミュニティサイト
戸田 幸裕
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員