未来のじぶんに、ちょっと先の気づきを
自分らしい働き方を見つけるためのコラム

障害者雇用枠での就労を目指す場合、履歴書に何を書くべきか悩んでしまいますよね。基本的な履歴書の書き方は一般雇用と同じですが、「どんな場面で困りやすいか」「どんな工夫をしているか」など、障害特性や希望する配慮について記載すると採用担当者に伝わりやすくなります。本記事では、障害者雇用枠で就職・転職する際の履歴書の書き方について、具体例・テンプレート付きで分かりやすく解説します。
障害者雇用における履歴書の基本的な書き方
障害者雇用枠の求人に応募する際の履歴書は、基本的な書き方は一般雇用枠と同じです。特に次の項目については、障害者雇用でも変わらない部分なので確認しておきましょう。
- 基本情報の書き方
- 学歴・職歴の書き方
- 免許・資格の書き方
- 志望動機・自己PRの書き方
基本情報の書き方
基本情報の部分では、ご自身に関する次の項目について正しく記載しましょう。
| 日付 | 履歴書を提出する日付を記載する ただし郵送する場合は投函日、オンラインの場合は送信日とする |
| 氏名 | 戸籍と同じ正式な名前を記入する 「ふりがな欄」には平仮名、「フリガナ欄」にはカタカナで振り仮名を書く |
| 住所 | 都道府県から書き始め、丁目・番地・号などを省略せず正確に記載する 郵便番号も忘れないように書くようにする |
| 連絡先 | 携帯番号もしくはメールアドレスなど、連絡がつきやすい連絡先を記入する メールアドレスは就職・転職活動専用のものを用意するのが理想的 |
| 顔写真 | ご自身の顔写真を貼り付ける 服装は原則スーツを着用し、清潔感のある髪型を心掛けて写真館や証明写真機で撮影する |
以上のポイントを意識することで、ご自身の基本情報を正しく伝えることができます。
学歴・職歴の書き方
「学歴・職歴」の項目には、どの学校をいつ卒業したか、どのような会社に勤務していたかなど、これまでの経歴を時系列で記載します。学校名や企業名は省略せずに正式名称で記載し、職歴の場合は所属していた部署・役職も含めます。原則として、社会保険加入歴があるものはすべて記載してください。パートやアルバイトの経歴は省略して構いませんが、転職活動にアピール材料になる経験であれば記載します。
年月は誤りがないように注意して、和暦・西暦や表記は統一することも大切です。現職の場合は「現在に至る」、退職している場合は「契約期間満了につき退職」「一身上の都合により退職」など簡潔な理由も記載します。ブランク期間がある場合は、必要に応じて面接で補足説明を行いましょう。
免許・資格の書き方
「免許・資格」は、自身の知識・スキルを示せる重要項目なので、抜け漏れなく記載する必要があります。取得順ではなく、難易度や業務への関連性が高いものから優先的に書くことで、担当者に実力をアピールしやすくなりましょう。取得に向けて勉強中の資格も、例えば「日商簿記2級取得に向けて勉強中」など記載することで、学ぶ姿勢や意欲も示せます。
志望動機・自己PRの書き方
「志望動機・自己PR」も注目度が高い項目なので、熱意が伝わりやすいように工夫することが重要です。書籍やWebサイトの例文をそのまま使うと、面接で質問に対応しづらくなるため、ご自身の体験や考えを反映して「自分の言葉」で書きましょう。志望動機は「○○の経験から貴社の○○に魅力を感じ、自身の○○スキルを活かして貢献したい」など、具体的に書くことで担当者に魅力的に映ります。
障害者雇用の履歴書における「障害」に関する書き方
障害者雇用における履歴書では、ご自身の「障害」に関する記載もします。必ずしも必要なわけではありませんが、記載しておくと会社側の理解が得やすく、その後の相互理解を図りやすくなります。ただし、一般的な履歴書のフォーマットには記載欄がないことが多いので、別途A4用紙などにまとめましょう。
- 障害者手帳の種類・等級
- 障害の診断名
- 障害特性や症状
- 障害との付き合い方
- 必要な配慮事項
障害者手帳の種類・等級
障害者雇用枠で就労する場合、障害者手帳を取得している必要があります。障害者手帳の種類・等級は、会社が障害者を雇用するために必要な情報なので、履歴書に記載しておくことが大切です。
障害の診断名
障害や疾患の診断名を記載することで、障害のおおまかな内容を担当者が把握できます。ただし、障害特性や症状は個人差が大きいため、後述するように詳細を補足しておく必要があります。
障害特性や症状
ご自身の障害特性や症状について、特に「はたらくうえでの困り事」にフォーカスして、分かりやすく記載します。例えば発達障害(ADHD)がある場合は、「優先順位をつけるのが苦手で、複数の業務が重なると混乱しやすい」などです。
障害との付き合い方
障害と付き合うために、ご自身で普段から行っている対処法を示します。これにより、後述する配慮事項への理解も得やすくなります。例えば、夜は早めに寝て早朝に起きて基本的な生活習慣を整えたり、体調が悪いときはしっかり休んだりしているなどです。
必要な配慮事項
「このような配慮を得ることで成果を出せる」という配慮事項を伝えます。例えば、「抽象的な指示だと意図を理解できず混乱してしまうので、具体的な指示をいただけると適切にタスクを遂行できます」のように、仕事の成果につながることをイメージできるように記載しましょう。これまでの内容を踏まえて、次のような内容を記載できれば、担当者に必要なことが伝わりやすくなります。
| 発達障害(ADHD)により、精神障害者手帳2級を取得しています。優先順位をつけて計画を立てることが特に苦手で、複数のタスクが同時に発生すると混乱してしまいます。できるだけ順番を整理して取り組むようにしていますが、それだけでは限界があるため、可能な限りひとつずつ個別に指示をいただけると幸いです。 |
休職や退職がある場合の書き方は?

障害による困難や体調不良などにより、過去に休職や退職がある場合はどう書くべきか悩んでしまうでしょう。次のポイントに注意して、あくまで事実を伝えることが大切です。
- 休職の理由や対処法を明確化する
- 納得してもらえる退職理由を書く
休職の理由や対処法を明確化する
障害者雇用の履歴書で、休職期間について必ずしも書く必要はありません。ただし、履歴書にブランクがあると面接などのタイミングで質問される可能性があるため、履歴書に書いておくのが無難です。その際は、休職の理由や今後のための対処法を記載しましょう。例えば「ストレスによる精神疾患で休職したが、療養中にストレスの解消法やセルフケアを身に付け、現在は安定してはたらくことができる」などです。
納得してもらえる退職理由を書く
退職理由は「一身上の都合」とすることが一般的ですが、具体的な理由を簡潔に記載できるのが理想的です。例えば、「就労移行支援を利用するため退職」「療養のため退職」と書いておくと、採用担当者が納得しやすくなります。
障害者雇用の履歴書で失敗しないためのポイント
障害者雇用枠で就労するための履歴書で失敗しないように、次のポイントを意識することが大切です。
- 障害について客観的に説明する
- 配慮事項は具体的に記載する
- プロのサポートを活用する
障害について客観的に説明する
ご自身の障害について書くのは、「評価が下がってしまうのではないか」など不安なこともありますよね。しかし、障害者雇用において企業側が特に気になるポイントでもあります。
前述した項目をできるだけ客観的に記載することで、採用担当者に正確な情報が伝わり、安心感や信頼感を与えることができます。ただしネガティブな印象を与えないように、「改善している」「付き合い方を身に付けている」「合理的配慮で成果を出せる」など、ポジティブなニュアンスも伝えることが重要です。
配慮事項は具体的に記載する
障害者雇用では、企業は合理的配慮を提供する必要があるため、採用担当者は「できないこと」「必要なサポート」を理解する必要があります。そのため「支援ツールを使用させてほしい」「電話対応ができない」など、具体的な内容を記載しておきたいところです。ただし障害特性と関係ない、もしくは過度の配慮を求めると、「障害と向き合えていない」「わがままだ」という判断につながりかねないので注意してください。
プロのサポートを活用する
障害者雇用の就職・転職活動では書類選考が難関となります。今回解説したように、障害者雇用の履歴書を作成する際は障害情報の書き方に注意が必要ですが、配慮事項をまとめることが「難しく感じる」「上手くいかない」というケースは多く見られます。そのため、障害者雇用枠の履歴書に関して、プロのサポートが得られるサービスや支援機関の利用がおすすめです。
障害者雇用の履歴書に関するサポートが得られるサービス・支援機関
次のようなサービス・支援機関を活用することで、障害者雇用の履歴書に関するサポートが得られます。
- ハローワークの障害者関連窓口
- 障害者専門の転職エージェント
- 障害者向けの転職支援コミュニティ
ハローワークの障害者関連窓口
全国各地のハローワーク(公共職業安定所)には、障害がある人のための「障害者関連窓口」が設けられています。職業相談や求人紹介はもちろんのこと、履歴書作成や面接対策など、就職・転職活動で悩みがちなポイントのサポートが得られます。
障害者専門の転職エージェント
「障害者向けの転職エージェント」では、障害に関する専門知識があるキャリアアドバイザーに、就職・転職の相談ができます。もちろん、履歴書の書き方に関するアドバイスも得られるうえに、ご自身の障害特性や配慮事項への理解も深めることも可能です。
障害者向けの転職支援コミュニティ
障害者雇用のプロに相談する以外に、「同じ悩みを抱えている障害者同士で交流したい」と思うこともあるでしょう。そこで「障害者向けの転職支援コミュニティ」を活用することで、ご自身と同じように仕事を探している人と交流できるので、もうひとりで悩む必要はありません。
不安や悩みを相談したり情報を共有したりすることで、ご自身の障害特性や配慮事項への理解を深め、履歴書の書き方についてのアドバイスも得られます。体験談やQ&A、交流相談で同じ悩みを持つユーザーと一緒に「障害者雇用のハテナ」を解決できるので、ぜひお気軽に登録してみてください。
障害者雇用の履歴書でお悩みの方は「あしたのあるきかた」へ!

障害者雇用の履歴書を作成するときは、障害特性や症状、必要な合理的配慮について分かりやすく書くことが大切です。休職・退職やブランクがある場合も隠さず、納得してもらえる理由や経験したことをポジティブに伝えましょう。履歴書の書き方で悩んだときは、同じ障害を持つ人との交流や、専門知識があるスタッフのサポートが役立ちます。
障害者向けのコミュニティ「あしたのあるきかた」では、障害のある方が交流できるスペースを提供しています。コミュニティに登録することで、同じ悩みがある人とつながり、就労のための準備を整えやすくなるでしょう。
就業意欲のある障害者向けの
コミュニティサイト
戸田 幸裕
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員