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自分らしい働き方を見つけるためのコラム

障害者雇用枠で就職・転職活動をする際、一般雇用枠と同じく書類審査のあとに面接が行われます。面接官の前で「どう答えるべきか」「うまく説明できるか」など、不安なことがあってお困りではないでしょうか。事前に準備しておくことで、障害者雇用枠の面接に対応しやすくなります。本記事では、障害者雇用枠の面接でよく聞かれる質問と回答例、準備のコツや伝え方のヒントを解説します。
障害者雇用枠の面接の特徴とは?重視されるポイント
障害者雇用枠の就職・転職活動で面接を受ける際は、主に次のようなポイントが重視されるため、面接準備を行うときは意識したいところです。
- 障害特性と就労への影響
- 人柄や性格
- 仕事への適性や希望条件
障害特性と就労への影響
障害者雇用枠の面接特有の質問事項が、障害の種類や現在の症状、仕事への影響についてです。その内容により、今後の就労に障害特性がどのように影響するか、どのような配慮が必要かなどが判断されます。「長期的に就労できるか」という点が企業にとって特に重要なので、障害に関する不安材料を伝えたうえで、ご自身で行っている対処法や必要な配慮事項を分かりやすく伝えることが大切です。
人柄や性格
障害の有無に関わらず、人柄や性格は重要な判断材料となります。職場の雰囲気に馴染みにくい場合は、企業側が配慮を検討することもあります。事前にその点を丁寧に伝えることで、安心してはたらける環境づくりにつながります。
身だしなみや立ち振る舞いを整えて、笑顔ではっきり受け答えすることが大切です。ただし、障害特性によりコミュニケーションや集団行動が苦手な場合は、その点も丁寧に伝えましょう。自身の障害特性を理解して対処し、それでも難しい部分で配慮を求めることで、面接官に誠実な姿勢をアピールできます。
仕事への適性や希望条件
これまでの仕事で身に付けた知識・スキルについても問われます。一般雇用枠と同じく、採用後の配置や教育などの方針を検討するために重要な質問なので、正しい情報を伝える必要があります。「できること」「できないこと」を明示したうえで、合理的配慮により成果を出せることをアピールしましょう。
障害者雇用枠の面接でよく聞かれる質問と回答例

障害者雇用枠の面接でよく聞かれる質問と回答例をご紹介します。ご自身の面接対策の参考にしてみてください。
- 自己紹介と自己PRをしてください
- 弊社への志望理由を教えてください
- 得意なことや苦手なことは何ですか
- 前職の退職理由は何ですか
- ご自身の障害や疾患について教えてください
- 前職でどんなことにストレスを感じましたか
- 業務において必要な配慮はありますか
- 残業や休日出勤は可能ですか
- 最後に何か質問はありますか
自己紹介と自己PRをしてください
面接の冒頭でよく聞かれる項目で、名前や性格、前職での経験について答えます。詳細はこのあと聞かれるので、ここは簡潔にまとめて「本日はよろしくお願いいたします」と締めましょう。
| <回答例> 本日は貴重な機会をいただきありがとうございます。私は○○と申します。前職は○○社で○年○ヶ月ほど事務職を務めていました。周囲からは「いつも笑顔で親しみやすい」と言われます。これまでの経験が活かせると思い、御社に応募しました。本日はどうぞよろしくお願いいたします。 |
弊社への志望理由を教えてください
必ず聞かれる項目なので、応募先の企業はもちろん業界全体について調べたうえで、その会社ならではの魅力に感じたことを伝えます。あいまいな志望動機では熱意が伝わりにくいので注意が必要です。
| <回答例> 御社の○○という製品や、障害者雇用に関する取り組みに以前から関心があり、応募しました。また、ステップアップしたいという目標があるため、御社のメンター制度や評価制度にも魅力を感じています。 |
得意なことや苦手なことは何ですか
得意なことや苦手なことは、業務への適性の有無に加えて、自分自身を客観視できているかどうかが問われる質問です。特に「苦手なこと」は、採用後の配置や配慮事項などを考慮するための重要な要素になります。
| <回答例> ADHDの特性により、行動力や集中力があって仕事が早いところが強みです。ただ、集中するあまり物事の段取りや優先順位をつけるのが苦手です。そのため、タスク管理票やスケジュール帳を持ち歩くことで対応しています。 |
前職の退職理由は何ですか
企業は基本的に長期間はたらける人を求めるため、前職の退職理由は採用担当者にとって特に気になるポイントです。他責思考はマイナスイメージにつながるため、あくまで主体的な理由やポジティブな理由を説明し、今後のための対処法も伝えると効果的です。
| <回答例> 前職では任せていただくタスクが多く、残業の多さから体調を崩して退職しました。業務量や体調を自身で管理できていなかったことが原因です。退職後は療養に専念し、現在では自分の症状を客観的に判断し、疲れやストレスをため込まないように工夫しています。 |
ご自身の障害や疾患について教えてください
障害者雇用枠の面接で必ず聞かれるのが障害に関する項目です。業種や職種が適しているか、自己理解ができているかなど、企業側が判断するために重要になります。
| <回答例> ASDで精神障害者手帳○級を取得しています。抽象的な発言の意図を理解することが難しいため、業務指示は期限と目標を具体的に示していただけると助かります。 |
前職でどんなことにストレスを感じましたか
この質問の背景には、ストレスに対する考え方や対処法を見極め、仕事への適性を判断しようとする意図があります。単に「大変でした」というネガティブな内容ではなく、対処法とその結果も伝えることが重要です。
| <回答例> 普段からミスが多く、周囲に迷惑をかけてしまうことが大きなストレスでした。例えば、締め切りを勘違いして納期に遅れてしまうなどです。カレンダーアプリのリマインド機能を使うようにしてからは、同じミスを繰り返すことがなくなりました。 |
業務において必要な配慮はありますか
障害者雇用における企業の義務である「合理的配慮」を提供するために重要な質問です。障害特性を踏まえて、ご自身で行っている対処でも解消しきれない部分について、企業側に求める配慮事項を伝えましょう。
| <回答例> 先天性難聴があり、補聴器を使用していますが、聞き取りが難しいことがあります。そのため、チャットツールなどでテキストでご指示いただけると大変助かります。必要に応じて、筆談や文字起こしツールの利用も可能ですので、ご配慮いただけますと幸いです。 |
残業や休日出勤は可能ですか
障害者雇用枠では、基本的に残業や休日出勤は配慮される傾向にありますが、職種によっては求められるケースもあります。体調を維持することが大事なので無理する必要はありませんが、角が立たないように伝え方を工夫したいところです。
| <回答例> 主治医から残業を控えるように指示されていますが、業務の進め方やスケジュール調整によって、安定してはたらけるよう工夫しています。 |
「対応できないこと」を伝えることは大切ですが、上記のように「前向きな姿勢」を伝えることで、企業からの印象が良くなります。
最後に何か質問はありますか
質問内容からはたらく意欲や熱意、人柄やコミュニケーション能力などが判断されます。「ありません」と答えると入社への意欲が低いと捉えられてしまう恐れがあるため、会社や仕事に関する逆質問を用意しておくと効果的です。
| <回答例> 御社ではどのような障害のある方がはたらいているのでしょうか。また、その方々はどのような活躍をされていますか。 |
自分と似た障害のある人が活躍している会社であれば、就業後のワークスタイルやはたらきやすさがイメージしやすくなります。
障害者雇用枠の面接を成功させるコツ
障害者雇用枠の面接を成功させるために、次のようなポイントを意識して準備を整えておきましょう。
- 事前に模擬面接を繰り返す
- 緊張への対処法を身に付ける
- ネガティブな点も正直に伝える
- 自己理解を深めておく
- プロのサポートを活用する
事前に模擬面接を繰り返す
面接準備を徹底しておくと、当日に安心して面接に臨みやすくなります。履歴書と矛盾せず一貫した内容を伝えるために、話す内容を書き起こしておくといいでしょう。家族や友人、キャリアアドバイザーの協力を得て模擬面接を行い、実際に声に出して話す練習を繰り返しておくことで、内容が頭に入って本番に備えやすくなります。
緊張への対処法を身に付ける
どれだけ準備を重ねていても、面接独特の雰囲気で緊張してしまうことはあるものです。想定される質問と回答を多く用意しておくことで、想定外の質問の可能性を減らして当日の不安を減らせます。「失敗できない」と考えると緊張しやすくなるので、「なんとかなる」と気分を楽にすることも大切です。また、面接官に「緊張しています」と正直に伝えることで、落ち着いて話しやすくなるかもしれません。
ネガティブな点も正直に伝える
障害に関するネガティブな面を伝えることについて、「不採用になってしまうのでは」と不安に感じる方は多いです。しかし、障害に関する情報は合理的配慮の判断材料なので、必要に応じて正直に伝える必要があります。むしろ正確に伝えることで「自己理解が深い」「障害や症状と付き合えている」という評価につながります。ただし、前述したようにネガティブな面だけではなく、適切に対処して安定しているというポジティブな話につなげることが大切です。
自己理解を深めておく
面接で自分のことを伝えるためには、障害特性や症状、仕事に対する適性を正しく理解しておく必要があります。そのためには、自分自身を見つめて理解する「自己理解」が欠かせません。特に障害特性については、ご自身でも言語化できていないケースが多く、配慮事項をまとめる際のハードルになりがちです。
プロのサポートを活用する
障害者雇用枠の面接に臨む際は自己理解を深めたうえで、さまざまなパターンの質問と回答例を考えておくことが大切です。しかし、障害特性や必要な配慮事項をまとめる際に「難しい」「上手くいかない」と感じることや、面接対策が思うようにいかないというケースは多く見られます。そのため、障害者雇用枠の面接対策や回答例作成に関して、プロのサポートが得られるサービスの利用がおすすめです。
障害者雇用枠の面接対策に効果的なサービス・支援機関
次のようなサービス・支援機関を活用することで、障害者雇用枠の面接対策に効果的なサポートが得られます。
- ハローワークの障害者関連窓口
- 障害者専門の転職エージェント
- 障害者向けの転職支援コミュニティ
ハローワークの障害者関連窓口
全国各地のハローワーク(公共職業安定所)には、障害がある人のための「障害者関連窓口」が設けられています。職業相談や求人紹介はもちろんのこと、履歴書作成や面接対策など、就職・転職活動に必要なサポートが得られます。
障害者専門の転職エージェント
「障害者向けの転職エージェント」では、豊富なサポート実績があるキャリアアドバイザーに、就職・転職の相談ができます。面接対策のためのアドバイスや模擬面接・練習の機会に加えて、詳細なフィードバックによりご自身の障害特性や配慮事項への理解が深まることも魅力です。
障害者向けの転職支援コミュニティ
「同じ悩みを抱えている障害者同士で交流したい」と思うこともあるでしょう。「障害者向けの転職支援コミュニティ」を活用することで、あなたと同じように求職中の人や転職に成功した人と交流できるので、もうひとりで悩む必要はありません。転職活動や面接の回答例に関する不安や悩みを相談することで、面接対策に役立つアドバイスやヒントが得られるでしょう。
障害者雇用の面接対策や回答例でお悩みの方は「あしたのあるきかた」へ!

障害者雇用枠の面接では、仕事への適性・スキルや人柄はもちろん、障害特性と就労への影響も重視されます。面接を成功させるためには、自己理解を深めてネガティブな点も正直に伝えて、事前に面接練習を繰り返しておくことが大切です。今回ご紹介した質問と回答例を参考にして、面接対策にお役立てください。
障害のある方が面接対策を行うときは、自己理解を深めるための情報収集が必要です。同じ障害を持つ人と交流したり、専門知識があるスタッフのサポートを受けたりすることで、障害者雇用枠の面接対策のヒントが得られます。障害者向けのコミュニティ「あしたのあるきかた」では、障害のある方が交流できる場を提供しています。ぜひ参加してみてください。
就業意欲のある障害者向けの
コミュニティ「あしたのあるきかた」
戸田 幸裕
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員