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障害者向け採用面接マニュアル|よく聞かれる質問・回答例と好印象な受け答え

就職活動の際、多くの方が直面する大きな課題となるのが「採用面接」です。障害者雇用の面接で聞かれる質問や障害の伝え方などが分からず、不安に感じている方もいるでしょう。
本記事では、障害者雇用の採用面接でどのようなことを聞かれるのか、適切な答え方を例文付きで分かりやすく解説します。面接官がチェックしているポイントや、就職活動の準備についてもまとめました。選考通過率アップを目指すあなたを、しっかりサポートします。
【例文付き】障害者雇用の採用面接でよくある質問と回答のコツ

障害者雇用の採用面接でよく聞かれる6つの質問項目と、その回答例をみていきましょう。
自己紹介
採用面接において、自己紹介は障害の有無にかかわらず重視されるポイントです。多くのケースで面接の最初に聞かれるので、あらかじめ要点やアピールしたいポイントをまとめて準備しておくことをおすすめします。また、自己紹介で話した内容について後で詳しく聞かれることもあるため、はじめは簡潔に、聞かれそうなポイントは深く掘り下げておきましょう。
なお、採用面接では「◯分程度で」と時間制限が課されるケースが多いです。制限時間に対し、長すぎても短すぎても印象が良くありません。伝えたいことに優先順位をつけて整理したうえ、1分や3分など何パターンか考えておくと慌てずに済みます。
回答例
(自分の名前)と申します。
私は前職で、仕訳入力や経費精算を中心とする経理事務の仕事に●年●●ヶ月従事していました。
日商簿記3級や、MOSも取得しているため、即戦力として活躍できると考えています。
志望動機
会社への志望動機は、採用面接で必ず聞かれる項目の一つです。事前に備えておくことで、スムーズに受け答えできるようになります。
まず、就職を希望する会社について下調べし、なぜ入りたいと思ったのかを伝えましょう。特に障害者雇用枠の採用面接では、なぜその道を選んだのか、仕事でどのように貢献できるのかなどを具体的に伝えれば、意欲の高さがアピールできます。これまでのキャリアを踏まえ、できることや挑戦したいことを考えることで、説得力のある志望動機になるはずです。
回答例
経理事務の経験を活かし、御社に貢献できると考え応募いたしました。
ASDの障害特性から、定型作業を集中して正確に行ったり、細かな確認作業をしたりするのは得意分野です。
スキルや希望に合わせてキャリアアップが目指せる御社の文化にも深く共感しております。
職歴と前職を退職した理由
履歴書に前職について記載している場合は、ほとんどの場合、退職理由を聞かれます。企業が職歴と退職理由を聞くのは、スキルおよび仕事への価値観の確認と、問題解決能力や姿勢を見極めることが主な目的です。
退職理由で嘘をつくことや、率直すぎる表現、人のせいにすることは避けましょう。退職を決意する原因となったことにどのように対処し、克服へ向けて何をしたか、それを転職先でどう活かせるのかを伝えることで、成長意欲と真面目でひたむきな姿勢が示せます。
もし就労経験がなくても、アルバイトをしたことがあるならそれを伝えておきましょう。一般的に 、社会保険の加入が合った場合や、就労期間が長期に渡るときなどを除き、アルバイトは 正式な職歴にはなりません。とはいえ、はたらくにあたって十分な体力や基本的な体調管理能力が備わっているといった「職業準備性」や、就業に役立つスキルがあることなどがアピールできます。逆に転職回数が多い場合は、嘱託社員や正社員の職歴を中心に伝え、アルバイトは補足程度に書くのがよいでしょう。
回答例
前職では周囲のメンバーとうまく意思疎通が図れず、指示の内容をよく理解できないことから自信を失い、体調にも悪影響が出たため退職を余儀なくされました。
退職後は休養と治療に専念しつつカウンセリングを受け、障害特性を踏まえてどのような指示ならスムーズに理解しやすいかを学び、それを自分の言葉で伝えられるようになったと感じています。
新しい職場では、周囲のメンバーとの情報伝達に行き違いが生じないよう、報告・連絡・相談を徹底し、言葉だけではなく文章で内容を伝えることを心がけたいと考えています。
障害に関する内容
障害があることを開示して就職活動する場合は、必ず症状や特性について聞かれると想定して準備しておきましょう。企業は適切な合理的配慮や環境整備を行うためにも、障害特性を正確に把握する必要があるからです。
具体的には、次の内容を明確化し、説明しやすいようまとめておきましょう。
- 障害や疾患の名称
- 通院の状況
- 服薬の状況と副作用について
- 障害者手帳や受給者証の有無
- 現在の健康状態
- 調子を崩したときの対処方法
- 得意なこと・苦手なこと
- 前職でストレスを感じたこと
- 就業にあたって必要な配慮
- 残業の可否
障害特性を踏まえ、できること・できないことを伝えておくことで、思い違いや入社後のミスマッチが防げます。また、ただできないというだけではなく、どのような配慮があればできるのかを伝えることで、面接通過率アップにつながります。ただし、配慮があって当然という態度ではなく、要望を取り入れてもらえればより良くはたらけると伝わるような言い方や姿勢を示すことが大切です。
回答例
私には、発達障害による聴覚過敏があります。
健常者が気にならないような些細な物音が気になって、環境によってはうまく集中できないことがあります。
仕事に集中するため、座席をできる限り静かな環境に配置していただいたうえ、必要に応じてイヤーマフや耳栓などの防音グッズの使用を許可していただけないでしょうか。
また、月1回程度の通院が必要ですので、円滑な業務遂行のためにも、ご配慮いただけると助かります。
趣味・休日の過ごし方
障害者雇用の採用面接では、趣味や休日の過ごし方を聞かれることも多い傾向にあります。質問を通して、応募者の人となりや企業イメージ・価値観との相性、ストレスへの対処法を知り、ミスマッチや早期退職を防ぐことが狙いです。
面接官から趣味や休日の過ごし方を聞かれたら、無理に取り繕わず、正直に好きなこととその理由を具体的に答えましょう。ただし、夜更かしや朝寝坊など日常の生活リズムが大きく崩れるような趣味や過ごし方は、自己管理能力に不安があると見なされる恐れがあるため、極力避けるほうが無難です。
回答例
私の趣味は魚釣りです。
休日は自分でペイントしたオリジナルルアーを持って、アウトドアを楽しんでいます。
大自然の中でゆっくりとした時間を過ごすことで、心が落ち着き、また頑張ろうという活力が湧いてきます。
逆質問
採用面接では「最後に何か聞きたいことはありますか?」などの「逆質問」が行われることも珍しくありません。逆質問は、就業意欲の高さや会社との相性の良さを伝える絶好のチャンスです。逆に、質問を求められたにもかかわらず何も聞かないと、企業への興味や仕事に対する意欲が乏しいと捉えられてしまう恐れがあります。先の問答で伝え忘れたことや、自身の魅力・熱意のアピールにつながる内容などを尋ねるとよいでしょう。
ただし、仕事の条件面や待遇面のことばかり聞くと、熱意が感じられないと判断されることもあるので注意が必要です。会社への貢献や努力の意思が伝わる逆質問で、印象アップを目指しましょう。
回答例
- 御社ではどのような方が活躍していますか?
- 御社で勤務する障害者の方の1日のスケジュールを教えてください。
- 入社後はどのような業務を任せていただけますか?
- 御社の◯◯◯という業務に興味があるのですが、将来的に携われる可能性はありますか?
- 入社までに学んでおくべきスキルや資格はありますか?
- ◯◯◯という資格(スキル)を取得していますが、御社の業務で活かせる可能性はありますか?
- ◯◯◯さん(面接官の方の名前)が考える、御社ではたらくやりがいを教えていただけますか?
障害者の採用面接で面接官がチェックしている4つのポイント

障害者雇用の採用面接で、面接官はあなたの次のようなポイントをチェックしています。
- 態度
- 言葉遣い
- 身だしなみ
- 職業準備性
態度
面接では、答える内容はもちろん、受け答えの態度も重視されます。発言内容がどれほど素晴らしくても、傍若無人な立ち居振る舞いでは印象が悪くなってしまいかねません。
面接会場に入る前には、必ず3回ノックし「どうぞ」と声をかけられてから入室しましょう。口元は自然な笑顔を浮かべ、話す相手に目線を合わせてください。会話のキャッチボールを意識し、ハキハキと受け答えできるよう練習しておけば、コミュニケーション力の高さがアピールできます。
言葉遣い
面接官は、応募者の発言内容だけではなく、言葉遣いもチェックしています。ビジネスシーンでは、挨拶と正しい日本語・敬語を使いこなすことが求められるからです。
採用面接の前後には、礼儀正しく挨拶するのが基本的なマナーとなります。発言するときはもちろん、相槌なども気を抜かないようにしましょう。
身だしなみ
企業ごとのドレスコードにもよりますが、採用面接ではダークカラーのビジネススーツが基本です。私服を指定されたときは、業種や社風を踏まえつつ、カジュアル過ぎないシャツやパンツ(ズボン)、スカートなど清潔感のある身だしなみを心がけてください。
また、髪型は落ち着いたカラーで、スッキリとした印象に整えましょう。爪を短く整える、ヒゲはきれいに剃っておく、服にアイロンをかけるなど、細部まで手を抜かないようにチェックしてください。
職業準備性
職業準備性とは、体調管理や生活習慣など、就業にあたっての基礎的な能力や資質といえるものです。長期的な安定就業のために不可欠なスキルだといわれており、障害者雇用の採用面接でもよくチェックされるポイントだといえます。
職業準備性の具体例は、以下のとおりです。
- 食事や睡眠などの生活リズムが整っている
- 身なりを清潔な状態に保てる
- 周囲・職場の人に挨拶ができる
- はたらくための集中力や体力がある
- 報告・連絡・相談ができる
- 職務遂行に必要な知識や技能が備わっている
職業準備性が備わっていることをアピールできれば、問題なく就業できると判断され、採用率アップにつながります。分かりやすい証拠となるのが、就労移行支援事業所への通所履歴です。もし離職中であっても、通所中であることや、身についたスキルを伝えることで、就業意欲と職業準備性の高さが効果的にアピールできます。
面接の準備を徹底して選考通過率アップを目指そう!
障害者雇用の採用面接は、あなたの人柄やはたらく意欲を伝える大切な場です。事前に質問の傾向や回答のコツを知っておけば、どのような質問がきても慌てることなく自分らしさをアピールできます。また、立ち居振る舞いや身だしなみ、就業に備えた生活リズムを整えるなど、言葉にはならない部分も採用面接におけるアピールポイントの一つです。
採用面接にあたって不安や疑問があるときは、同じ目標や経験を持つ仲間の話を聞いてみませんか。「こんな質問をされた」「こういう風に答えたら好印象だった」などの実体験から、解決の糸口がつかめるかもしれません。Q&A形式での質疑応答や、交流相談で同じ悩みを持つユーザーと一緒に「障害者雇用のハテナ」を解決できます。ぜひお気軽にご登録ください。
就業意欲のある障害者向けの
コミュニティサイト
戸田 幸裕
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員