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障害者の仕事の探し方で大切なことは?適職を探すポイントとサービスを紹介

障害のある方が就労するにあたり、大きな悩みとなるのが「仕事の探し方」でしょう。ご自身に合う仕事があるか、職場で理解が得られるかなど、さまざまな不安がありますよね。いくつかのポイントを意識することで、ご自身の障害特性や適性に合う「理想の仕事」が探しやすくなるでしょう。そこで本記事では、障害者の仕事の探し方や利用できる支援機関・サポートについて解説します。
障害者の仕事探しの選択肢のひとつが「障害者雇用」
一般雇用枠で仕事を探すことが難しい、あるいは仕事が続かないなどの場合は、「障害者雇用枠」での就労を検討してみてください。障害者雇用枠とは、障害者の雇用促進を目的として、企業が一般雇用枠と別枠で障害者を雇用する制度です。
障害者雇用促進法では、障害者雇用率制度により「法定雇用率」が定められており、従業員数40名以上の企業は障害者を雇用する義務があります。この法定雇用率は民間企業では2025年時点で2.5%となっており、順次引き上げられています。障害者の仕事の探し方でぜひとも知っておきたいポイントを見ていきましょう。
- 障害者手帳を所持している人が対象
- 雇用形態や働き方はさまざま
- 障害者雇用ではたらくメリットは多い
障害者手帳を所持している人が対象
障害者雇用枠ではたらくためには、「障害者手帳」を取得しておくことが必要です。障害者手帳は3種類あり、障害の種類ごとに次のような分類があります。
| 障害者手帳の種類 | 対象となる障害の種類 | 障害等級 |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 身体障害 | 1級〜6級 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 精神障害 | 1級〜3級 |
| 療育手帳(愛の手帳) | 知的障害 | 自治体によって分類が異なる |
なお、療育手帳(愛の手帳)は自治体によって、名称や障害等級の分類などが異なります。
雇用形態や働き方はさまざま
厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査」によると、障害者の雇用形態は障害の種類ごとに次のようになっています。
| 障害の種類 | 正社員 | 正社員以外 |
|---|---|---|
| 身体障害者 | 無期契約:53.2% 有期契約:6.1% | 無期契約:15.6% 有期契約:24.6% |
知的障害者 | 無期契約:17.3% 有期契約:3.0% | 無期契約:38.9% 有期契約:40.7% |
| 精神障害者 | 無期契約:29.5% 有期契約:3.2% | 無期契約:22.8% 有期契約:40.6% |
| 発達障害者 | 無期契約:35.3% 有期契約:1.3% | 無期契約:23.8% 有期契約:37.2% |
障害の種類によって差はありますが、上記のように自分に合わせたさまざまな働き方が可能です。
障害者雇用枠ではたらくメリットは多い
障害者雇用枠で仕事を探すことで、職場から適切な「合理的配慮」を受けることができます。合理的配慮とは、障害者が必要とする際に企業が負担になりすぎない範囲でサポートを提供することを指し、2016年の障害者雇用促進法の改正により雇用主に義務化されています。
さらに、2024年4月の障害者差別解消法の改正により、民間事業者を含むすべての分野で合理的配慮の提供が法的義務となり、社会全体で障害者への支援が強化されました。障害者雇用枠ではたらくことで適切な配慮が受けられるようになり、ご自身の障害と付き合いながらはたらき続けやすくなります。
障害者雇用で探しやすい仕事の傾向
障害者の仕事の探し方を検討する前に、まずは障害者雇用で探しやすい仕事について、次のポイントから確認しておきましょう。
- 業種は製造・小売・サービス業が多い
- 事務職やサービス関連の職種が多い
業種は製造・小売・サービス業が多い
厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査」によると、産業別雇用者数の割合は障害の種類ごとに次のようになっています。
| 身体障害者 | 1. 製造業(21.3%) 2. 卸売業・小売業(21.2%) 3. サービス業(14.9%) |
| 知的障害者 | 1. 卸売業・小売業(32.9%) 2. 製造業(15.4%) 3. サービス業(13.2%) |
| 精神障害者 | 1. 卸売業・小売業(25.8%) 2. 製造業(15.4%) 3. サービス業(14.2%) |
| 発達障害者 | 1. 卸売業・小売業(40.5%) 2. サービス業(14.6%) 3. 製造業(10.2%) |
このように、障害の種類に関わらず製造業・小売業・サービス業などの業種が、障害者の仕事で多い傾向があります。
事務職やサービス関連の職種が多い
厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査」によると、職業別雇用者数の割合は障害の種類ごとに次のようになっています。
| 身体障害者 | 1. 事務的職業(26.3%) 2. 生産工程の職業(15.0%) 3. サービスの職業(13.5%) |
| 知的障害者 | 1. サービスの職業(23.2%) 2. 運搬・清掃・包装等の職業(22.9%) 3. 販売の職業(16.8%) |
| 精神障害者 | 1. 事務的職業(29.2%) 2. 専門的・技術的職業(15.6%) 3. サービスの職業(14.2%) |
| 発達障害者 | 1. サービスの職業(27.1%) 2. 事務的職業(22.7%) 3. 運搬・清掃・包装等の職業(12.5%) |
事務職やサービス系の職種が一般的な傾向がありますが、知的障害者や発達障害者の場合は運搬・清掃・包装等の職業も多くなっています。
障害者の仕事の探し方で意識すべきポイント

障害者の仕事の探し方で意識すべきポイントは次のとおりです。
- 自分に合う業種や職種を選ぶ
- 障害への理解がある職場を選ぶ
- 必要な配慮事項を明確化しておく
- 障害者向けの就労支援サービスを活用する
自分に合う業種や職種を選ぶ
障害の有無に関わらず、自分に合う業種や職種を選ぶことが大切です。ミスマッチな仕事を選ぶとスキルや経験を活かせず、モチベーションの低下や早期離職につながります。ご自身の適性を活かせる仕事を選ぶために、後述する支援サービスを活用するのがおすすめです。
障害への理解がある職場を選ぶ
適性に加えて、「はたらく環境」を重視することも、障害者の仕事の探し方には欠かせません。企業の障害者の受け入れ実績や取り組みなどを見れば、障害者雇用や合理的配慮の提供などに対する企業の姿勢を把握できます。
必要な配慮事項を明確化しておく
安定してはたらき続けるためには、必要な配慮事項を明確化し、職場に伝えることが大切です。合理的配慮は、一人ひとりの障害特性に合わせたきめ細やかな調整が必要なため、「何ができないか」「どんな配慮があればはたらけるか」などの観点から整理することが求められます。
これにより企業が適切な合理的配慮を提供でき、必要に応じてサポートを受けながら安心してはたらき続けることが可能です。合理的配慮の例として、次のようなものが考えられます。
- 社内をバリアフリー化する
- 通勤ラッシュを避けた時差出勤が選べる
- 体調不良や通院時に休憩が取れる
- 時短勤務や在宅勤務が選べる
- 各種支援ツールを導入する
障害者向けの就労支援サービスを活用する
障害のある方のなかには、ご自身の障害特性を把握しきれておらず、具体的な配慮事項が分からないというケースが多く見られます。そのままでは適切な合理的配慮が受けづらくなってしまうため、障害者向けの就労支援サービスを活用するのがおすすめです。プロのサポートを受けることで、ご自身の障害特性や症状への理解が深まり、はたらき続けるために必要な配慮事項や環境が分かるため、ご自身に合った適職や職場が見つかりやすくなります。
障害者雇用で利用できるサービス・就労支援機関
障害者がはたらきやすい仕事を探す、あるいはそのための準備を整えるために、次のような支援機関やサービスを利用するのがおすすめです。
- ハローワークの障害者関連窓口
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
- 障害者専門の転職エージェント
- 障害者向けのコミュニティサイト
ハローワークの障害者関連窓口
全国各地のハローワーク(公共職業安定所)には、障害がある人のための「障害者関連窓口」が設けられています。障害に関する専門知識がある担当者によるサポートが受けられるため、ご自身の障害特性や症状に合う求人が見つかりやすいです。職業相談や紹介に加えて、履歴書作成や面接対策など、就職・転職活動に必要なサポートも受けられます。
地域障害者職業センター
「地域障害者職業センター」は、障害者の就労や定着支援を目的として、各都道府県に設置されている機関です。専門的な職業リハビリテーションサービス、例えば作業支援や職場対応スキル講習など、職業準備のための支援が受けられます。直接的な職業紹介はありませんが、はたらく準備を整えられることが魅力です。
障害者就業・生活支援センター
「障害者就業・生活支援センター」は、前述したハローワークや地域障害者職業センターと連携して、障害者の就業や生活をサポートする施設です。職業訓練や現場実習の紹介のほか、就職・転職活動のサポートや定着支援などが受けられます。
障害者専門の転職エージェント
「仕事の探し方が分からない」「適職を探すのが難しい」という方は、「障害者向けの転職エージェント」の活用を検討してみてください。サポート実績が豊富なキャリアアドバイザーに伴走してもらうことで、どのような仕事が向いているか把握しながら理想の職場を探せます。
また、障害のある方が転職を目指すとき、ご自身の障害特性や必要な配慮事項を把握できていないケースも多いです。キャリアアドバイザーとの対話を重ねることで、ご自身の障害特性や適性を把握し、「何が得意か」「どんな合理的配慮が必要か」など、はたらきやすい環境を手に入れるために欠かせない自己理解が深まります。その結果、理想の就労を実現できるでしょう。
障害者向けのコミュニティサイト
障害者の仕事の探し方で生じがちな悩みが「情報が少ないこと」です。そこで「障害者向けのコミュニティサイト」の活用がおすすめです。ご自身と同じように仕事を探している人や、現在就労中の人と交流できるので、もうひとりで悩む必要はありません。
不安や悩みを相談したり情報を共有したりすることで、ご自身の障害特性や配慮事項、向いている仕事などについて見直すことができます。さらに体験談やQ&A形式での質問、交流相談などさまざまなコンテンツを通じて自己理解が深まるため、焦らずじっくり準備して理想の就労を実現しやすくなるでしょう。
障害者の仕事の探し方でお悩みの方は「あしたのあるきかた」へ!

障害者の仕事の探し方で重要なポイントが、障害者雇用枠での就労を検討することです。障害者雇用枠ではたらくことで、ストレスを減らして安定して就労できる可能性が高まります。また障害者雇用枠では、事務職やサービス関連の職種ではたらく人が多いですが、ご自身の適性に合う仕事を選ぶことが大切です。
今回ご紹介したように、障害のある方が仕事を探す上ではさまざまな点を意識する必要があります。そのため、いきなり就職・転職先を探すのではなく、まずは情報を得ることが大切です。
「あしたのあるきかた」では、障害者向けのコミュニティを提供しています。同じ障害がある方と情報を共有したり、専門知識があるアドバイザーのサポートを受けたりすることで、あなたにとって「はたらきやすい仕事」とは何かについて、理解を深めることができるでしょう。
就業意欲のある障害者向けの
コミュニティサイト
戸田 幸裕
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員